黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経対馬キャンペーンの終焉。他。

 27日から28日にかけての分です。

竹島と高校解説書 固有の領土となぜ教えぬ - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/340233/

 27日付「主張」。政府見解は「竹島は日本固有の領土」ですから、「日本国は『固有の領土である』と主張している」と教えるのはかまわないと思います。一方で、「韓国はこう主張している」ということも教えてかまわないし、教えるべきでしょう。それだけの話なんですがねえ。産経新聞がそんなに政府見解を絶対視するなら、河野談話村山談話などの政府見解を否定したり、集団的自衛権の政府解釈に文句をつけたりするのは、やめた方がいいですね。中学の教科書でいったん教えたことを、高校の教科書でまた教えるのは、社会科嫌いを増やす要因でもあります。かといってもちろん、一人の生徒に対して中学と高校で矛盾したことを教えるのも理不尽な話です(3年の間に新しい科学的発見があって改訂されるならともかく)。
 あるていどの期間ウォッチしていればわかることですが、実は産経新聞の論調は、世間での印象とは逆に(だと思いますが)反韓的ではありません。左派政権と右派政権であからさまに態度を変えるのは、対米姿勢にももちろん国内政権に対しても見られることで、全体的な韓国への姿勢はむしろ親和的だと考えられます。産経は、共産中国となぜかロシアはずっと敵視しているので、領土問題で尖閣諸島北方四島で強硬な主張をするのはわかります。一方で、中華民国(台湾)も尖閣諸島の領有権を主張していることには触れないあたりは、上記の党派性から理解できます。しかし、なぜ韓国との間だけは、竹島問題やさらに事実上ありもしない対馬問題(後述)まで持ち出して対立を煽るのか、一貫性がなくてまったく理解できません。尖閣諸島問題に言及するとき、一言でも「台湾も領有権主張している」と書くだけで、いちおう一貫した姿勢になるのですが。

劉暁波氏への重刑 国際社会にも責任がある - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/340444/

 天安門事件のときに学生運動を主導した劉氏が「08憲章]を発表したかどで有罪とされたことについて、28日付産経新聞「主張」に対しては、基本的に賛同します。産経的にダブスタが入り込んでいない? 大丈夫か? という検証もするべきところですが。言論の自由が何より大切だ、という主張そのものは、産経もわたしも変わらないようです。ただ、「何よりも」というのが国家体制の維持より個人の自由が優先されるべきという意味*1になるのかどうかについて、わたしの考えと産経の真意が一致しているかどうかは、あまり明らかではありません(控えめな言い方)。
 「国家の支配に対して人民が抵抗する権利」は自然権として認められるものであり、そのひとつのかたちが言論の自由であり、劉暁波氏を代表とする中国民主化運動の言論の自由その意味において最大限認められるべきであるということを、この産経「主張」はあまり明確にしていませんね。

[opinion][expression]表現の自由に関する最近のスタンスについて。

 さて、言論の自由といえば密接に関連するのが表現の自由です。従来わたしは、これを最大限に認める立場でブログを書き、言論活動をしてきたつもりですが、ここ数ヶ月はその点について沈黙しています。この沈黙を、歯がゆく思われる方もいらっしゃることはわかっているのですが、ご批判に対しては平伏するしかありません。
 実は、どうすればいいのかさっぱりわからなくなっています。いろいろ考えを深め、対立する意見も読んで、その意味するところを解釈しているうちに、「表現の自由を最大限に押し出すことは正しいのか」、いやこれはちょっと違うな。「押し出すだけでいいのか」「『表現の自由』ですべて解決できるのか」、でもやはりちょっと違うのですが、なにかそういうドツボに入っています。とりあーじ、じゃない、とりあえず獣は檻に入れるべきだとか、檻から逃げるようなら殺処分もやむを得ないけれどりこうなぞうはどくいりのえさをたべませんとか、『シートン動物記』は文学として名作だとか、いろいろ。
 こうした、あえて言えばレベルの高い葛藤とは別に、非常に低レベルな表現規制の動きが、一部政治家を巻き込んでまだまだ続いていることは、承知しています。よけいなことを考えずにこうした動きに、単純に個人の自由としての表現の自由言論の自由を脅かす国家レベルの動きには、単純かつ直接的に反対運動をするべきなのです。それはわかっているのですが、今は動けません。平伏しつつ、頼むから俺なんかに期待しないでくれよ、とつぶやいておきます。

産経「対馬が危ない」キャンペーンの終焉。

 先日からはてなハイクでいろいろあったりして*2、そういえばこんなキャンペーンもやってたなあ、とか思い出したわけですが、改めて最近の状況を調べ直してみました。

国防の観点で離島振興を 東京で「対馬が危ない」フォーラム - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/333062/

 現在、産経電子版(iza!/MSN産経ニュース)にあるキャンペーン関連記事は、この12月7日付のものが最新で、開催を報告するだけのごく短い記事です。主催はフォーラム実行委員会、後援が産経新聞社などとなっています。主催者の一人である藤田達男氏(日本会議所属)のブログによると*3、後援は「産経新聞日本文化チャンネル桜日本会議」、大会委員長は平沼赳夫衆院議員、基調講演は田母神俊雄氏。実行委員には、産経関係者では安藤慶太*4花岡信昭氏、そしてキャンペーン開始当初から一手に記事を担当してきた宮本雅史記者が名を連ねています。宮本記者はフォーラムにビデオメッセージも寄せています*5が、なぜ直接参加していないかというと、この10月に東京社会部から那覇支局長に栄転しているためです。当然、今は基地移設問題に関連した記事などを書いているわけですが、ここでは対馬のつの字も出てきません。
 いずれにしろ、【対馬が危ない】タグのついた記事は、8月あたりから紙面に現れていません。人事面も含めて産経の対馬キャンペーンは、キャンペーンとしては終わったと考えて良さそうです。これが、宮本氏の「栄転」に伴うものなのか、キャンペーン終了の結果が人事異動だったのかは不明ですが。
 まあ、産経が手を引いたとしても、まだチャンネル桜日本会議はやる気満々のようですし、大枠で彼らと協力関係にある産経の紙面に「対馬が危ない!!」という言葉が載ることはこれからもあるでしょうから、警戒しつつのんびりと眺めていこうと思います。
 二匹目の泥鰌を狙ったのか、産経新聞は10月に千野境子特別記者(元論説委員長)の筆で【与那国島が危ない】*6という記事を出しましたが、これは全3回の連載と特別編のみで終わってしまったようです。これを宮本記者が本格的に展開するために那覇に異動したというのなら、多少は話がわかるのですが。


 関連して調べていたら続々と出てきた、人事面の謎について、ちょっと追求してみます。9月の政権交代により、沖縄の基地問題がクローズアップされることはわかっていたので、地方支局への異動とはいえこの時期だったら左遷人事だとは言い切れません。ちょっと本気で解釈に困るところです。
 前々任の那覇支局長だった小山裕士記者は、評価がちょっとアレな人なのですが(例の産経と世界日報に挟まれた犯罪被害者中傷チラシの問題をスルーしたり*7、例の教科書問題抗議11万人集会の「取材」をした人)、そういう意味合いの異動なのかと少し思ったのですが、それともまた違うようです。小山記者のブログをたどってみると、彼の那覇勤務は今年2月までで、その後任は「ベテラン特派員」とのことです。その他に、10月1日付で那覇支局ではふたたび人事異動があったことも述べられており、宮本支局長の着任はこのときだと考えられます。半年だけ那覇支局長を務めた「ベテラン特派員」を調べてみると、上海支局長だった前田徹記者のようです。あるブログ*8によるとバリバリの右派系産経記者らしく、またかつてはイラク人質事件における「イッテイッテ」報道当時の外信部長でもあったようですが、今年3月以後に産経が沖縄で何か問題を起こしたとも聞いていないし(問題といえば常時問題なんですが)、なぜ半年で転任なのでしょうか。前田記者の現在の所属も、検索した範囲では不明です。あまり関係ないけど、上海と那覇って地理的にはかなり近いよね。
 なお、小山記者は3月から古巣の大阪本社文化部に所属するとともに、編集委員に昇進したそうです。小山記者が昇進したというだけでも不可解なのですがそれはともかく、つまり編集委員は一般的に支局長より上ということになります(産経には10年以上も論説委員兼ソウル支局長を務めている人がいるので、肩書きと所属は直接関係ないのだろうとは思いますが)。すでに編集委員だった宮本記者が地方支局長になったということは、うーん、これはやっぱり左遷なのだろうか。

*1:ここで「個人の自由」は、個々人一人ひとりのわがままではなく、「総体的な個人」の自由を意味することになるのだと思います。

*2: 対馬が危ない - はてなハイク

*3: http://tafu.iza.ne.jp/blog/entry/1323828/

*4:あまり情報がないのですが、月刊誌「正論」編集部員です。

*5: http://www.youtube.com/watch?v=elisPw5-TBM

*6: http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091014/plc0910140856006-n1.htm など。

*7: d:id:vanacoral:20080324 参照

*8: Anti-Japan-Media Examiner/自由主義史観研究会北米支部:沖縄に嵐の予感? であってほしいものです - livedoor Blog(ブログ) http://blog.livedoor.jp/lajme/archives/51587949.html