黙然日記(廃墟)

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産経対馬キャンペーン、国際的に注目される。

 産経の対馬キャンペーンに対する発言なので取り上げておかねばと思いつつタイミングを逸していたのですが、小沢一郎民主党代表が「済州島を買ってしまえ」と発言したとされる問題について*1。本人の「そんなことは言っていない、土地を合法的に買うのはお互い様の経済行為だ」という主旨の否定によって、あっさり収束したようです*2。小沢氏は、発言も弁明もいつも微妙なのですが(微妙に間違っているというニュアンスではなく、正しいのか間違ってるのかわたしにもわからないといった意味合いで)、なぜかうやむやで収束してしまうことが多いという、不思議な人です。いろいろと。

朝鮮日報記事。

 さてこの発言をきっかけに、産経対馬キャンペーンの存在が改めて注目されています。日本ではほとんど相手にされていませんが、韓国ではそれなりに注目されているようです。まあ、よくある話です。
 というところで、Elekt_raさんにコメント欄で、こんな記事を教えていただきました(いつもありがとうございます)。

[Why] 땅 0.0026% 한국인 소유라고 대마도가 위험? - 1등 인터넷뉴스 조선닷컴
http://news.chosun.com/site/data/html_dir/2009/03/20/2009032001176.html?Dep0=chosunmain&Dep1=news&Dep2=topheadline&Dep3=top

 って、読めねえ(笑)。同紙日本語版にもまだこの記事は出ていません。Elekt_raさんが部分訳を d:id:pr3:20090309:1236610289#c に書き込んでくださったので、Yahoo!機械翻訳と併せてざっと読んでみました*3
 記事の趣旨は、小沢氏の妄言も「極右紙である産経新聞」の記事も「右翼団体日本会議」の視察も*4、要するに右翼が騒いでいるだけだ、島民も韓国側の観光関係者も迷惑している、というような感じでしょうか。

対馬特区。

 この記事の中にちょっと気になる記述がありました。

長崎県は 2004年土地利用及び取得規制を緩和する対馬島特区法が用意されながら外国人も不動産を買うことができるようにした.外国企業に対する免税恩恵まで与えている.対馬島行政政府は外国である投資幼稚[誘致?]に積極出ている.

 機械翻訳なので明らかな誤訳もありますが、大筋は理解できる文章です。文章はわかりますが聞いたこともない話なので、いろいろ調べてみました。

長崎県構造改革特区について
http://www.pref.nagasaki.jp/tokku/
(1)『しま交流人口拡大特区』計画について
(平成15年11月28日認定・平成20年7月9日取消)

●特区区域
対馬対馬市

:●特区概要

対馬は、韓国とは地理的にも歴史的にも関係が深く、また壱岐対馬国定公園に指定されているなど豊かな自然に恵まれています。この地域特性を活かし、現在韓国釜山との定期航路の開設を行うなど、韓国との国際交流を柱に地域振興に取り組んでいます。今回、韓国人観光客の短期滞在査証の発給手続きの簡素化や長崎県対馬高校における韓国学に重点を置いた構造改革特区研究開発学校設置事業の規制の特例を導入することによって、さらなる交流人口の拡大と、受け入れ態勢の整備を可能とし、観光振興などによる地域の活性化を推進するものです。

*5
 産経対馬キャンペーンではまったく触れられていませんが、対馬は2003年から2008年まで、韓国との交流拡大を目的とした構造改革特区に指定されていました。主に韓国からのビザ取得に関するものと、リゾート開発に関する規制緩和を行うもので、学校で韓国語などを教えるという内容も含まれています。しかし、上記長崎県のページにリンクされている、しま交流人口拡大特区の当初計画「概要」*6を見ても、韓国人観光客向けのリゾート施設を作るために国定公園内の土地利用規制を緩和してくれ、という内容はありますが(バブルのころによくあった話ですね)、「外国人が土地を買えるようにする」などとは一言も書いてありません。
 ところがどういうわけか、対馬問題で韓国に批判的な人たち中心に「『対馬特区』は対馬の土地を外国人が買えるようにするものだ」というデマがはびこり、さらに2004年にそれが実現してしまったことにされているようです。最初の特区認定は2003年11月、1年ごとに見直され、目的を果たしたとして2008年7月(産経対馬キャンペーン開始の3ヶ月前)に終了しているわけですが、なぜ2004年に実現したことにされているのか、なにを誤解したのかさえ、いくら調べてもわかりませんでした。そもそも、少なくとも2004年には、外国人による土地取得は原則自由化されていたようなんですよね*7

対馬市の国際交流についての考え - 対馬市WEB通信局+市の政策+
http://www.city.tsushima.nagasaki.jp/policy/policy05_04.html

 このデマに基づく問い合わせには対馬市も苦慮したようで、このような公式発表までされています。朝鮮日報記事の上述の内容は、おそらくこのデマを真に受けたものでしょうが、責任あるマスメディアとしてはちょっと困ったものですね。産経新聞じゃあるまいし。*8

0.0026%。

 対馬市の財部能成市長の発言として産経新聞が紹介した「0.26%」という数字をずっと使ってきたのですが*9朝鮮日報記事の見出しは「0.0026%」になっています。正直、どっちも信用できないので、確認してみました。島の面積708.5平方キロメートル(属島を含む)に対して、韓国資本の取得した土地は5500坪(18150平方メートル)と市長は発言したようで、これは産経記事でも朝鮮日報記事でも同じです。1平方キロメートル=1,000,000平方メートルとしてあらためて計算してみると、何度検算しても0.26%ではなく0.0026%になりますね*10。ちょっとこれは、元記事の時点で確認しなかったわたしも悪いのですが、「0.26%」という数字を算出したのは市長なのか産経新聞の記者なのか、市議会あたりで追求してくれないでしょうか。

あの団体。

 他に、韓国にある対馬専門旅行社が対馬の不動産取得をセールスしていて、その企業の名前がハッピーランドだというのもちょっと気になったんですが、まさかね。日本語で検索してもこの企業の名前が出てこないし、さすがにそこまでひどいマッチポンプあの団体でもやらないでしょう……。

*1:産経に直接絡む話題ではないからわざわざ取り上げなくてもいいのですが、言及しておかないと某スレあたりで「はてサは小沢擁護のためなら平気でダブスタを使う」とか言われそうで。

*2:いちおう該当記事を示します。12日付ってもう1週間以上前か……。 http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/230893

*3:参考までに、Yahoo!翻訳・ウェブ翻訳 http://honyaku.yahoo.co.jp/url

*4:おそらく昨年12月の国会議員11人による視察のことでしょうが、厳密には全員が日本会議所属ではないはずだし、Elekt_raさんの訳も機械翻訳も「地方議会議員15人」となっているところが気になります。11人+隊李出席1人の他に、地方議員が3〜4人いたのかもしれませんが。そういえば東京都議会で「三羽烏」と呼ばれている人たちがいるそうですが……。

*5:どうでもいいんだけど、このページにある「壱岐いき離島留学教育特区」というネーミングはいかがなものか。

*6: http://www.pref.nagasaki.jp/tokku/gaiyou.html

*7:2004年に不動産登記法が全面改正され翌2005年から施行されましたが、外国人の土地取得が全面的に自由化されたのがこの改正によってなのかどうか、調べ切れませんでした。ただ、おそらくそんなことはなく、それ以前から自由化されていたと思われます。自由化されたのは1998年だと記述しているページもあるのですが( http://www.ohkuraya.co.jp/knowledge/back_num5.html )、これも改正内容を確認できませんでした。どっちにしても特区とは関係ありませんが。

*8:この項目については、こちらのブログがたいへん参考になりました。主張内容は別として、お礼申し上げます。「このブログには嘘が書いてあるかもしれません。:つれづれなるままに対馬http://blog.livedoor.jp/stray_cat1981/archives/652812.html

*9: d:id:pr3:20081113:1226588322 以後

*10:この数値では0.00256%とした方が正確ですが、本島のみの696.1平方キロメートルに対しては0.0026%で問題ありません。