黙然日記(廃墟)

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産経、帝国精神を受け継ぐ。

【軍事情勢】禁じ手つかうアブナイ政治家 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/america/234173

 「イラク駐留軍の大半を16ヶ月で撤退させる」という公約を掲げたオバマ大統領が、就任後にそれを19ヶ月に後退させ撤退する数も少ない、という批判に、これは軍人の意見を採り入れた現実主義だ、と擁護しています。それはまあいいでしょう。ブッシュ政権イラク戦争にのめり込んでいったのは、前線*1を知らないワシントンが政治・外交・経済上の目的を先行させたベトナム戦争と同じパターンだ、と指摘しているあたりは、野口裕之記者にしてはよく書いたと言えるでしょうね。
 オバマ大統領を擁護するなら「アブナイ政治家」とは誰かというと、小沢一郎民主党代表のことでした。「第七艦隊」発言を中心に、日米安保軽視だ、危険だ、と非難しています。「国家主権と国民の生命・財産を守る安保政策を政局に絡める野心」とまで言っているので、国家主権のことがどこかに書いてあるかと思ったのですが、この記事の小沢氏非難の根拠らしきものを文中から探してみても、対米姿勢にしかありません。文章構成の上からは、公約を(オバマ氏と同じように)“チェンジ”するだろう、というのも根拠らしいのですが、これは単なる憶測ですよね。国家主権云々はおそらく国連中心主義のことでしょうが、これを日米安保体制と比べてことさらに国家主権を持ち出すのは理解できません。

産経抄】3月22日 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/234155/

 全員一致なら無効、というイザヤ・ベンダサン山本七平)『日本人とユダヤ人』の引用から始まっていて、ウォッチャーには大受けでした。39年前に出てさんざん批判された書物を持ち出すあたり、明治38年(1905年)に設計され翌年制式採用された39年前の三八式歩兵銃で玉砕攻撃をする帝国陸軍の精神を引き継いでいるようです*2

【土・日曜日に書く】誤った捜査 失われしもの 井口文彦 (1/4ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/090322/crm0903220309003-n1.htm

 捜査の可視化が進められていることに、かつてベテラン刑事たちが手練手管で情報収集したことを持ち出して、嘆いています。「自白があったから解決」という空気に対して一人抵抗した刑事の例を挙げているのですが、そうした職人芸は例外でしょうし、可視化する意味を本当に理解しているのかなあ、と不安になります。取調室のハーフミラーだけではなく、今は取り調べの完全録画録音をするかどうかまでが議論になっていて、警察側はこの手の職人芸を持ち出して反発しているのですが、これも21世紀には通用しない武器でしょうね。上記「産経抄」と並べると、いろいろ興味深く読めるコラムでした。

*1:ここで野口記者は「前戦」とtypoしているのですが。

*2:この比喩はすでに産経抄スレにも書いてしまいましたが、、Apemanさんのテキスト http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20090320/p1 にある「70年代の道具立て(=山本七平)だけで21世紀の議論に挑むつもりだったのか。まさに旧軍精神の継承者といえましょう。」から着想しました。