黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経「正論」、トンデモを極める。

【正論】竹内久美子 京都で共産党が元気なわけ - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/128034/

 なんで竹内氏が「正論」欄の常連執筆者なのかもよくわからないのですが、今日は特に物凄いですね*1
 先日の京都市長選では前市長からカルトまでの幅広い支持を受けた元教育再生会議委員・門川大作氏が当選してしまった件について*2、圧倒的有利だったはずの門川氏が110万有権者の中で951票差まで共産党候補に詰め寄られたのはなぜなのか、竹内氏お得意の利己的遺伝子の立場から説明を試みています。
 いいですか皆さん、頭痛薬を用意してからお読みください。もともと京都では共産党が強いわけですが、それは京都人の中に平等を好む遺伝子が(比喩としての遺伝子ではなく生物学的なものが)存在するからだとして、平等遺伝子の起源は京都に多い渡来人系である、南方縄文人=古モンゴロイドに対して北方渡来人=新モンゴロイドが持ち込んだものである、南方では寄生虫や病原菌への免疫力を持つ遺伝子が強く求められ一夫多妻制だったが北方では事情が違うので一夫一妻制だった、それが平等遺伝子の起源なのであり、京都人の共産党好みにつながっているのだ――という理論です。どのへんで頭痛薬が必要になりましたか?(笑)
 竹内氏の利己的遺伝子論は似非科学として批判も多いですが評価する人もいるし、日本人のルーツが南方縄文人と北方弥生人に求められることもほぼ定説だし、部分的には正しく見えるところもあるのですが、それを組み合わせる論理の飛躍が凄すぎます。京都に渡来人系が多いというのは古墳時代から大和朝廷のイメージなのでしょうが(それにしても奈良や大阪に比べ京都だけ特別に平等遺伝子が集中している理由にはなりません)、弥生人の渡来はそれより千年も前のことで、ほぼ全国的に弥生文化が普及してから(と言うのも愚かなぐらいの時間を経てから)京都への人口集中が始まったのですから、平等遺伝子は全国的に広まっているはずです。そもそも、古墳時代から京都に住んでいる市民がどれだけいるのか。一歩譲って平安時代から数えても、戦国時代初期に人口が激減したあとに(さらにそこから現代に到るまでの間に)他の土地から移住してきた人が比率としては大半ではないのか。それに……。
 いやなんつーかもう、ツッコミどころがいくらでもあるというか、ツッコミどころしかないというか。わざと矛盾だらけの文章を書こうとしても、なかなかこうはいかないのではないでしょうか。産経ウォッチには、カルト宗教の影響から*3お国のための被害者非難まで、いろんな見方があるわけですが、今日の「正論」はその白眉ではないかと思います。

*1:今朝この記事を見たときに、「今日はこのトンデモ遺伝子論をネタにするぞ」と思いタイトルだけメモ帳にコピペしておいたのですが、今になっていざ本文を書こうとメモを見たら、あまりに関係ないタイトルがコピペされているので、一瞬なんのことかわかりませんでした(笑)。

*2: http://d.hatena.ne.jp/pr3/20080218/1203340961

*3:産経が掲載した似非科学といえばID論がすぐ思い浮かびますが、竹内版利己的遺伝子論は同じ似非科学でも選択と競争による進化を前提としているので、ID論とは(たぶん)両立しません。このへんの無節操さもウォッチャーにとっての産経の魅力なのですが。