黙然日記(廃墟)

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ネトウヨの実証研究。

インターネットにおける「右傾化」現象に関する実証研究 調査結果概要報告書 - 辻大介の研究室
http://d-tsuji.com/paper/r04/index.htm

 大阪大学大学院人間科学研究科辻大介准教授の論文です。2ちゃんねるの某スレで拾ったネタなんですが、「思考錯誤」のdice-kさんでした*1。ご本人は「目新しさやおもしろみには欠けます」とorzされていますが、定量的なデータとしてたいへん面白い(興味深い)ものでした。ネトウヨはネットユーザの1%以下しかいないのかとか(多めに見積もっても3%ちょっと)。*2
 いままでわたしは「ネトウヨ=第3クラスタ愛国心より排外性が高い、リアル活動に消極的)」というイメージを持っていたのですが、どうも実際にはそれとは別の層が「ネット右翼」の中心を形成しているようです。表3-5で、ネット右翼は「(政党や団体に)献金・カンパした」が29%にも上っていることも注目されます。一方で、排外意識の高さとリアル生活での孤独感に相関関係があること(論文8ページ、表2-9)は、また別の人物像を示唆しています。
 「ネット右翼」に厳密な定義はないし、この論文も恣意性を認めているので、質問項目や統計操作によって(学問的には)有意な差が出てくることも考えられます。ただ、「少なくともある基準において、ネトウヨはネットユーザの1%〜3%」という数値になり、おそらく大きくは変わらないだろうということは覚えておいてよさそうです。この調査では、2ちゃんねるの(ニュー速+などを中心とした)利用と排外意識に相関関係があることも指摘されており、「(ネトウヨ的な主張に)ニュー速+ではほとんどが同意している」という言い方には注意が必要です。ただ、ネトウヨの中で2ちゃんねるに書き込んでいる人の比率が高いからといって、絶対数が少ないことには変わりないこともまた注意が必要でしょう(この調査では、「1人が1日何回書き込んでいるか」は調べていないようです)。
 とりわけ印象に残ったのは、第4節の結語でした。*3

2ちゃんねる」を媒介にした、排外性と攻撃的発言・書きこみの許容との結びつき。それがやはり、日本のネット「右傾化」現象の中核をなしていると言えるだろう。

*1: d:id:dice-x:20081006#p1

*2:この1%弱という数字が、たとえば2007年参院選での維新政党・新風の得票率と近い数字であることを、必要以上に重視してはならないのでしょう。ここでは「偶然の一致って面白いな」と考えておくことにします。

*3:最初にも述べたように、この論文が好意的に話題にされる――ぶっちゃけ、ニュー速方面のふいんき(ryを嫌っている――ようなスレも2ちゃんねるにはあるわけで、「2ちゃんねるの一部を媒介にした」とでもしてほしかったところですが。