産経「正論」の自己矛盾。

【正論】森林太郎はいかなる科学実験者だったのか　「鴎外」像を一新する西澤論文　東京大学名誉教授・平川祐弘 - 産経ニュース
http://www.sankei.com/column/print/160802/clm1608020010-c.html

　仲間褒めばかりしているから岩波書店「文学」が休刊になってしまったのだ、とか言っていますが、その「文学」掲載論文を褒めているのは疑問をもたざるを得ません。
　森鴎外林太郎が、医学者としてはろくでもなかったというのは、脚気論争を見るだけで明らかです。脚気伝染病説にろくな実験もせずにこだわり、日露戦争で戦死者以上の戦病死者を出した責任は重大です*1。それを「森はろくな実験をしていない」「脚気の実験が足りなかった」といって、森への評価が根本的に覆ることになるのかが疑問です。文系の世界で森鴎外の神格化があったという指摘なのかもしれませんが、この「正論」からはそこまで読み取れません。仲間褒めの疑いが濃厚です。

*1:「軍隊に入れば白い飯が腹いっぱい食える」で貧しい若者を釣った責任上、ということはあるにしても。