黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経のいちゃもんマニア阿比留氏。

 唐突ですが(このコーナーはいつも唐突だけど)、横浜Fマリノスの「F」には、Jリーグ関係者もサポーターも絶対に忘れちゃいけない歴史が籠められています。横浜FCとまぎらわしいのはたしかなんだけど、「横浜FM」という略称を間違っても「横浜M」としてしまってはいけません。

【戦後70年】謝罪マニアに告ぐ 「敗戦国」から脱却せよ 阿比留瑠比 - 産経ニュース
http://www.sankei.com/premium/print/150621/prm1506210022-c.html

 そういうわけで、いちゃもんマニアの阿比留氏です。他人のことは言えませんが。通常のページで8ページという長文で、月刊「正論」6月号からの転載だそうです。覚悟してお読みください。
 中曽根康弘政権が「戦後政治の総決算」を謳い、第一次安倍晋三政権が「戦後レジームからの脱却」を掲げた(阿比留氏は触れていませんが)にもかかわらず、現状で「戦後」が続いているのは、国民がそれを望んだから、言い換えれば、彼らの政策が失敗したからです。これらのスローガンが、ぶっちゃければ改憲ことに九条改憲を目指していることぐらい、国民は見抜いていました。その上で、九条改憲賛成が多数派になったことは、戦後一度もないのです。
 阿比留氏の見事ないちゃもんぶりは、まず「70年という長い時間を経ても『戦後』なのか」というところに現れます。そんなもん言い出したら、「J.S.バッハ生誕三百年」とか「かまぼこ誕生九百年」(今年です)とか言えないじゃないですか。歴史と現在が繋がっているんだなあ、という実感をもたらすのが「○○から××年」という言い方で、じゃあ阿比留氏はもうじき来る明治百五十年とか昭和百年も無視するのですね。なんか言ってからあげつらってやろう。
 それまで、外に出て行って勝つ戦争しか知らなかった日本が、最後の戦争でこてんぱんに負けて、もうこりごりだと誓ったのは、間違いなく事実です。一人前の男なら*1、誓ったからには守らなければなりません。それはそれで、苦しい道です。しかし、卑怯者だと呼ばれることと、三百万の国民を失うことを天秤に掛ければ、道はおのずから一つでしょう。
 第一次政権時代の安倍氏を信奉する阿比留氏は、あの頃が人生の絶頂だったので時言う。その成功体験を忘れられず同じ愚を繰り返すのは、まさに日本があの戦争でやらかしたことです。歴史に学ばない、とはまさにこのことでしょう。
 この文章で何度か、政府浩瀚なる人物のゆがんだ歴史観が披瀝されています。《果たして日本は英国を侵略したのか》という発言を、本当に日本政府の高官がしたのだとしたら、背筋がぞっとずくような話です。安倍首相任命の官房副長官とかならまだわかる乗るですが。あと「侵略の定義はない」という発言を、歴代政府をしているのに安倍首相が言うと騒ぎになる、というのは、ふだんの行いとしか言いようがありません。やることなすこと、人から信頼されないようなことばかりやっているから、そういうことになるのです。
 中韓批判、というか罵倒もひどいですね。元寇で高麗が攻めてきたことをこれでもかと述べていますが、どれだけの被害を受けたというのでしょうか。日本と朝鮮の長い歴史であった被害全体のうち、どれだけを占めるでしょうか。日本側の被害はそれだけで、あとは全部朝鮮側なのです。あとは白村江の戦いの自業自得の被害ぐらいでしょう。元寇の被害だけをもって相対的に被害者ヅラする国があったら、そんなのは笑ってやります。これを言っている阿比留氏が日本人だということが、本当に恥ずかしい。
 左派にとって「戦後」が黄金時代であったからそれに回帰しようとしている、とするならば、戦前と第一次安倍政権時代に回帰しようとしているのが阿比留氏と産経新聞で、それは本当に愚かしいことで。
 もう一度、あえて言います。責任を取らない奴は、男じゃないよ。

*1:もちろんあえてこう書いているのですが。