黙然日記(廃墟)

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「侵略」と言いたくない産経「正論」・古田氏。

 アベノミクスそのものは、評価していますよ。アウトバーンフォルクスワーゲンを評価するように。

http://www.sankei.com/column/print/150415/clm1504150001-c.html
【正論】「侵略」といえなかった朝鮮統治 筑波大学大学院教授・古田博司

 15日付「正論」ですが、なぜか今日取り上げます。朝鮮近代史専門の歴史修正主義者・古田氏の登場です。この人は、歴史修正主義と言うより歴史捏造主義ですね。江戸時代までの人々は《東洋といえば支那・天竺》と思っていた、という記述がありますが、それを言うなら「から・天竺」でしょう。「支那・脂那」なんて言葉は学者しか知りませんでした。落語とか、聞いたことないんですかね。こういう細かい捏造を、古田氏は平気でします。
 これに関しては、捏造なのか無知なのかわかりませんが。それにしても、この人の差別的な(つまり侮蔑するために侮蔑する)文章は、批判するためとはいえ呼んできて気分が悪くなります。東洋史の専門家なら、「土地に所有権はない」という儒教の理想を知らないはずがありません。それを知った上で、その理想を敷衍していた平安日本と李氏朝鮮が同レベルと言いがかりをつける態度には、本当に気分が悪くなります。「儒教の脳内理想を現実にやっても失敗することは中国2千5百年の歴史で証明済み」という批判はあり得ますが、前提を無視して後進的と切り捨てる態度は、はたしてフェアなものでしょうか。
 そしていつものごとく、「近代化してやったのだから侵略ではない」論。侵略して、支配するために必要だったから近代化を押しつけたのであって、「日本人は隣国の近代化を目的として併合した」と、はたして言えるのでしょうか。どう考えても無理でしょう。
 最後に、東洋は無神論的せかいだからどうのこうの、と論を立てているのですが、前提が間違っているので、なんのことやらわかりません。「神」という漢字は単に超自然的なものを意味し、「(多神教的)カミ」の概念はありませんが、「天」を中心とした道教という立派な宗教があります。無知にもほどがあると言うべきか、ご都合主義で現実を無視していると言うべきか、まああいかわらずの古田氏です。