黙然日記(廃墟)

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産経記者の一知半解。

 4/10分です。

【阿比留瑠比の極言御免】知れば知るほど…「嫌韓本」に学ぶ韓国対応法(1/3ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140410/plc14041012020010-n1.htm

 またなんだかオロカなことを言っていますよこの人は。嫌韓本で韓国を知った気になるのは、自費出版本「相対性理論は否定された!」*1相対性理論を知った気になるのと同じです。
 嫌韓本の元祖的存在である豊田有恒氏の『いい加減にしろ韓国』の引用から始まり、豊田氏の新刊嫌韓本とかつての親韓本『韓国の挑戦』が紹介されていますが、阿比留氏は豊田氏の他の本は読んだのでしょうか。わたしはSFファンとして、豊田氏のデビュー作から昭和時代の小説とエッセイにはひととおり目を通しましたが、初期作品を除いて、いい意味でも悪い意味でもSF界一の軽薄な人物だと評価しています。軽薄さがいい面に出れば、量産時代の筒井康隆氏をしのぐドタバタナンセンスを書ける人なのですが*2、悪い面が出ると「これほど信用できない人物はいない」と言わざるを得ません。豊田氏は友人の平井和正氏を手伝ってテレビアニメ『エイトマン』の脚本を書き、やがてライバルの『鉄腕アトム』に引き抜かれ、虫プロの流れで『宇宙戦艦ヤマト』のSF設定に携わったりもした、テレビアニメ創生期の貴重な生き証人なのですが、彼の文章はナルシズムと権勢欲と自己正当化のための矛盾だらけで、証言としての価値がまったくと言っていいほどないことは、アニメに少し詳しい人ならご承知のことでしょう。韓国関連書は上記『韓国の挑戦』[ISBN: 978-4396101275]だけ読みましたが、本当に韓国が好きというよりも(ジウジアーロがデザインしたヒュンダイポニーに惚れ込んだとかは事実なのでしょうが)、阿比留氏が解説しているように、当時韓国軍事政権を批判していた左翼イデオロギーへの反発が書かせた本だな、という印象でした。反骨の士ではあるのですが、一度時流に乗ると上記の悪い面がもろに出てしまう、困った人格でもあります。そういう彼が嫌韓ブームの旗頭として、「知れば知るほど韓国を嫌いになる」とうそぶいているのを見て、(他のことは抜きにしても)嫌韓自体が信用のおけないものだという印象を受けているのも事実です。どっちにしろ、本を数冊読んだだけで知った気になる阿比留氏の安っぽさには変わりありませんが。

【軍事情勢】“中国の蛮性”をベルギーは再び看破できるか(1/4ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140410/erp14041011340003-n1.htm

 まぁた、史実に触れるふりをしながら自分勝手な解釈で我田引水する、野口裕之政治部専門委員の「軍事情勢」のお時間です。とにかく冒頭の《《パンダ》の語源は、国際世論の誘導も意味する《プロパガンダ》ではないかとの思い込みを持った》からして、頭を抱えてしまいます。「プロパガンダ」を「プロガ」ならともかく「パンダ」と略す日本語が、どこにあるのでしょう。事実に基づくホワイト・プロパガンダと虚偽のブラック・プロパガンダを(どうせ最近覚えた言葉でしょうが)《分類が、余計に黒白のブチが特徴のパンダを想わせる》とか、もう笑わすのもいい加減にしてください。だいたいこうした思い込みが野口記者の特徴なのですが、本論の方でも似たようなものです。日清・日露戦争当時のベルギーのアルベール・ダネタン公使を日本理解者の「善玉」に仕立て上げる単純な世界観も、あいかわらずですね。清と中華人民共和国は体制として断絶しているわけですが、常に「中国」を悪玉に仕立て上げることだけは忘れていません。善悪二元論や自国中心主義(ショーヴィニズム)で世界を眺めていては、軍事情勢の分析など夢のまた夢ですが、野口記者はこれでいいのかもしれません。少なくとも、毎週ささやかな笑いを提供してくれるのですから。

*1:もし同名書が実在したらすみません。

*2:タイトルは忘れましたが、九条原理主義極左から旧軍復活をもくろむ極右までが連帯して自衛隊を潰す話とか大好きです。