黙然日記(廃墟)

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産経酒井記者のメディア観。

 2/15分です。

【酒井充の政界××話】言葉狩り、歪曲を駆使して言論の自由を許さない言論機関(1/6ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140215/plc14021518010011-n1.htm

 全6ページと長いのですが、内容は各2ページずつ全3部構成になっています。まずはいわゆる尖閣ビデオが公開されたことについて。安倍晋三政権の英断だ、特定秘密でもなんでもなかったのだ、と礼賛していますが、存在が周知のものになっている情報を公開するのは一種のパフォーマンスでしょう。知られていない情報が特定秘密として闇から闇に葬られることが問題なのです。当時の菅直人政権がビデオ公開に踏み切っていれば一色正春氏が海上保安庁を辞める必要もなかった、と述べているのは詐術というべきで、彼は特定秘密法と関係なく、国家公務員の守秘義務に確信的に違反したから辞めさせられたのです。そして、ビデオ公開を産経新聞はこんなに大きく報じたが、特定秘密保護法に反対した朝日新聞毎日新聞はほとんど、東京新聞はまったく報じなかった、と難じています。既述のとおり、尖閣ビデオと特定秘密を結びつけること自体に意味がなく、この非難も言いがかりというべきものでしょう。政府が何をした、と報じるも報じないも報道機関の判断であり、政府や政権のやることなすこと垂れ流していたら、それは報道機関ではなく宣伝機関です。産経には、少なくとも酒井記者には、そうした認識がないか、自らが宣伝機関に堕してもよしとする思考があるのだとしか思えません。
 次は、籾井勝人NHK会長の就任会見での発言問題です。酒井記者は、NHKも自分のところと同じように政府の宣伝機関になってほしいのでしょうか。籾井氏の従軍慰安婦に関する認識に問題があることは確実で、問題視する報道に問題があるとは思えません。酒井記者が「籾井氏の発言は(ほぼ)すべて正しい」と正当化している事柄は、典型的な歴史修正主義者の発言で、内輪でしか通用しないものです。《こういう記者のやり方を「言葉狩り」という》としていますが、そうでしょうか。わたしの認識ではこれは、差別用語などをピックアップして封殺する行為に対する呼び方ですが。酒井記者はこの節を《結局彼ら〔朝日新聞毎日新聞〕の言論の自由とは、自分が気に入らない、あるいは自分と違う意見は許さないという誠に自分勝手な「言論の不自由」を言っているだけにすぎないことがよく分かる》とまとめていますが、むしろ産経と酒井記者にこそ当てはまるのではないかと思います。
 最後は、田母神俊雄東京都知事選挙候補(当時)の応援演説をした百田尚樹NHK経営委員による、やはり同じような歴史修正主義の発言の全面肯定です。《「他の立候補者は人間のくずだ」》という発言を《品はないかもしれない》だけで片付けていますが、経営委員という公職にある者として許されるレベルではないでしょう。一事が万事この調子で、百田氏や同じNHK経営委員の長谷川三千子氏の言動について徹底的に擁護していますが、基準があまりにおかしくて読んでいて頭がくらくらします。
 とにかく酒井記者には、「報道は権力批判である」という視点がまったくありません。よくこれで、仮にも全国紙の定期コラムを担当できるほど出世できたものです。産経新聞社とは、いったいどういう組織なのでしょう。