黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経論説委員の富士観。

【日曜に書く】論説委員・福島敏雄 富士が日本人にもたらしたもの - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/life/news/130526/art13052603040000-n1.htm

 福島少年は、なかなか絵の才能があったようです。本人の申告を信じるならそれは魅力的な児童画で、わたしが教師なら絶賛していたでしょう。ところがその富士の絵を否定されたことその他から、福島記者は富士が嫌いになり、『常陸国風土記』から夏目漱石まで類例を探し、必死で富士をdisっています。太宰治の「大親分のよう」という表現まで含めているのはどうでしょうか。スマートさを愛した太宰ですが、反語好きでもありました。反語だけで小説を一本書いてしまったぐらいです(『走れメロス』)。漱石の、富士は天然自然のものでそれしか誇るものがない日本人は情けない、という指摘を持ち出すのが目的だったのでしょうが、世界遺産はまさに天然自然のものとして(および山岳信仰の形として)指定されるものですから、ちょっと外していませんか。魅力的な絵を否定された幼児体験には同情しますし、鬱屈した思春期体験には同感できますが、その私怨をいい年こいた現在まで引っ張っているようにしか見えません。
 あるいは「富士山」を「富士」と表記し続けることで、産経新聞社の親会社であり最近身売りを計画した(おそらくいまも計画している)フジメディアHDへの反感を暗黙に示しているのでしょうか。それもまた、鬱屈した思春期から成長していないと言わざるを得ません。