黙然日記(廃墟)

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産経野口記者の大和観。

「【軍事情勢】軍艦大和が遺してくれたこと」:イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/644442/

 新聞休刊日なので、ひさしぶりに「軍事情勢」をチェックしてみました。今日の分*1はいまいちつまらなかったのですが、関連でリンクされていた先週4月7日付が楽しかったので、こちらを取り上げてみます。
 4月7日が戦艦大和撃沈の日だということをすっかり忘れていたのですが、この日に放映開始したテレビ版『宇宙戦艦ヤマト2199』のスタッフは、それを意識していたのでしょうかね。作品の感想は「法華狼の日記」コメント欄*2にも書かせていただいたのですが、オールドファンには感涙ものの出来になっています(冒頭のCG戦闘で引っかからなければ)。あの球形艦首を強調したパースペクティブをCGで再現したオープニングだけでも必見です。
 本題に戻ります。戦艦大和の建造は無駄ではなかった、昭和三大馬鹿査定などとんでもない、大和のために開発された技術は民需転用されて戦後復興に貢献したのだ、と、そういう話です。この話の怪しげなところを追求する前に、《「最新鋭巨大浮沈戦艦」》という誤字にツッコんでおきましょうか。その前で《布哇(ハワイ)》をわざわざ漢字変換したり、旧漢字を使ったりしているようなヒマがあったら、誤字の見直しぐらいしてほしいものです。さて、大和の技術について。大和用測距儀(距離計)の開発が戦後日本のカメラ工業を下支えした、みたいなことが書いてあって、これはこの測距儀が日本光学工業(ニコン)製であることを言っているのでしょうが、日本光学は下請製造しただけで、基本設計は海軍によるものでした*3。もちろんレンジファインダーの基本は戦前からライカコンタックスなどドイツ製その他のカメラに使われていたものです。日本光学の測距儀は戦艦大和と武蔵に搭載されただけですから、量産技術にも結びついていません。もちろん日本光学の歴史で軍需時代は無視できないものですが、それがそのまま民需に転換したという考え方は注意を要します。軍事技術の民間転用がテクノロジーを発展させる、という言い方は軍事信奉者が好んで使うものですが、詳細については検討する必要があるでしょう。