黙然日記(廃墟)

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産経、デモを恐れる。

産経抄】7月28日 - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/life/news/120728/trd12072803140002-n1.htm

 ひさしぶりにお得意のアクロバットが炸裂しました。ロンドン五輪男子サッカー日本代表の快挙から、反原発デモ批判へとつなげています。接点はTwitterですが、逆にTwitterを接点にすればなんでもつながるわけで、卑怯だと思います。
 その反原発デモに関して《要所に陣取っているのは過激派の活動家や労組員、政党関係者がほとんどだ》とか書いちゃってますが、まるで彼らがデモを主導しているかのような印象操作ですね。目立ちたがりが目立つところに陣取るのはしかたのないことで、それと主導とは混同すべきではありません。だいたい、いまどき過激派がどれだけの人員を動員できると思っているのでしょうか。また、官邸前反原発デモには右翼団体も日の丸を掲げて参加しているのですが、彼らのことは無視でしょうか。それこそ、《自分の目で確かめることをお勧めしたい》ところです。
 ていうか「直接見てこい」ってのは、「デモに参加しろ」と遠回しに勧めていますか? それならそれで、たいへんけっこうなのですが。

【土・日曜日に書く】論説委員・皿木喜久 「声なき声」にも耳傾けたい - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120728/plc12072803150003-n1.htm

 というところで、皿木元論説委員長の登場です。この流れで「声なき声」と言えば、60年安保のときに岸信介首相(当時)が述べた、デモ参加者以外の声というわけですが、産経はそんなに反原発デモを恐れているのでしょうか。
 60年安保反対運動への歴史的総括はまだ定まっていないところがあると思います。なにしろその日米安保条約体制が、賛否の中でまだ継続中なのですから。ただ、戦後15年、「上からの民主化」15年の時点で、国民の直接行動が政治を動かし得るという自信を付けさせた点は大きかったと考えます。結局なにも変わらなかった、という皿木記者の指摘も一面の事実ですが、「自信を付けた」ことも事実です。
 そして日本国民は49年後、今度は投票行動によって政治を大きく塗り替えることができるという自信を得ました。これも、「結局なにも変わっていない」と言われると、3年前に政権交代を煽った身としてはうつむくばかりなのですが、自民党永久政権の幻想を崩すことだけはできたと言ってもいいのではないでしょうか。これこそ、「声なき声」の成し遂げた業です。
 皿木記者の言う「声なき声」、原発再稼働賛成が多数を占めた世論調査には、消極的賛成も含まれています。むしろそこにそこ、「声」を聞くべきではないでしょうか。デモという大きな声をいかに産経論説陣が恐れているかが、ここに如実に表れているような気がします。