黙然日記(廃墟)

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産経「主張」の住民投票観。他。

【主張】原発住民投票 国の基本政策を委ねるな - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120610/plc12061003040003-n1.htm

 見出しのレベルでもう、民主主義を否定しています。住民に政策決定権はなく、お上によらしむべし、と。
 32万人の署名を集め東京都議会に提出された住民投票条例案について、あらゆる面から否定しています。投票権を16歳からにしたことについては《選挙権は20歳以上の日本人とする現行法を無視している》とか言い出します。16歳というのはわたしもどうかと思いますが、「18歳以上」とした憲法改正のための国民投票法をあれほど絶賛していたことは忘れたのでしょうか。もちろん、都内在住の外国人に投票権を与えることにも反対していますが、原発事故の被害はもちろん国籍を問わず、住んでいる地域によって襲いかかって来るものです。
 ひどいのは、知事・議会が投票結果を尊重するように求めた条項に難癖を付けている点です。これがなければ住民投票の意味がありませんし、こうした条項のない住民投票条例というのは過去に存在したのでしょうか。《「民意」を盾に自治体の公正な判断が妨げられる恐れがある》という部分は、見出しの民主主義否定と繋がるものです。自治体が民意によって動かなければ、なにによって動くというのでしょうか。「自治」という文字は「みずからがおさめる」と読みます。
 「原発が止まって電力供給が滞れば」なんて脅しをいまさら使っているのも、もう後先がわからなくなってしまっているとしか思えません。現時点でとっくに原発ゼロ状態なのですが、季節が良いとはいえ、大きな節電要求が出ているような状態ではありません。原発ゼロでもある程度やっていけることは証明済みなのに、なにを血迷っているのでしょうか。
 東京都内に原子力発電所があるわけではないという指摘は確かです。この条例が成立し住民投票で「原発NO」の結果が出ても、どれだけ有効な対策がとれるかは疑問です(まして知事がアレですし)。その点では象徴的な意味合いしかない投票でしょう。象徴としてはたいへん大きなものとはいえ、産経「主張」は、いったいなにに怯えているのでしょうか。

【書評】『水野成夫の時代 社会運動の闘士がフジサンケイグループを創るまで』 - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/life/news/120610/bks12061008430003-n1.htm

【著者は語る】エフシージー総合研究所社長・境政郎氏 (1/2ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ)
http://www.sankeibiz.jp/econome/news/120609/ecf1206090501000-n1.htm

 かつて産業経済新聞社社長として全国紙転換を成し遂げ、フジテレビジョン初代社長を務めた水野成夫の評伝に関する「書評」です。現在の「正論」路線と称する極右路線になる前、単に反共・経済保守という立場だったころの産経新聞、いやサンケイ新聞を懐かしむ人もいらっしゃるのではないでしょうか。もっとも、一つのコンテンツをグループ挙げてプッシュする体制は水野時代からのもので*1、この本もFCG総研(フジサンケイ・コミュニケーションズ・グループシンクタンク)の境氏が著し、日本工業新聞社発行・産経新聞出版発売、そして各紙で書評ならぬ紹介と、いつもの見苦しい手法でプッシュしています。泉下の水野もさぞかし安心していることでしょう。自グループ創業者の評伝を自分たちで出すとかねえ。たとえば読売新聞社が「正力松太郎伝」を出すなんて考えられませんが。

*1:たとえばフジテレビの『鉄腕アトム』が人気になると、サンケイ新聞に『アトム今昔物語』を連載、買収したプロ野球球団をサンケイアトムズと改称、など。