黙然日記(廃墟)

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古森記者、否定する。他。

 3日は憲法記念日ということで、各紙とも関連記事が多く載っていました。特に今年は4月28日の各党改憲案発表があり、数日にわたり賑やかでした。しかし産経はことに多かったように思います。それも改憲一色、右派一色で、よくぞこれだけ、と思うぐらいです*1
 その中で異彩を放っていたのがこの記事です。

憲法9条、日本の対外関与を束縛」 米研究機関 - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/world/news/120503/amr12050317020005-n1.htm
【ワシントン=古森義久】〔略〕
 最近の米側では日本の憲法に由来する集団的自衛権の行使の禁止が日米同盟の強化への障害になるという意見が広まっているが、憲法自体を日本自身にとっての束縛として、暗にその改正を正面から求めるということはきわめて珍しい。

 米国からも九条改憲圧力があるぞ、という趣旨の記事なのですが、それは《きわめて珍しい》、逆に言えばそんな圧力の方が例外だと認めてしまっている記事です。こもりんはジャーナリストとして率直なのか、それとも自爆が好きなのか、どっちでしょうか。

【欠陥憲法 新しい国づくりへ】(5)平和主義条項 柔軟な改正、世界の潮流+(1/3ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120503/plc12050308060010-n1.htm

 シリーズ5回目でまとめのような意味もあります。憲法になんらかの平和主義条項を持つ国は157箇国に及び、むしろ主流であって、「世界に誇る平和憲法」というのはもはや神話だ、と断じています。しかし「なんらかの平和主義条項」の内容を見ていくと、日本国憲法ほど徹底したものはあまりないようです。さきがけであり徹底したものとして、やはり九条は世界に誇れる憲法条項ではないでしょうか。また、「日本国憲法は新しい」という“神話”もあるそうですが、そんなの(制定直後以外は)聞いたことありません。改正へのハードルが高い硬性憲法であることは、二院制と同じく考え方の違いであって、別に「悪いこと」ではありません。国の仕組み全体が保守的である、急激な変更を望まないシステムであるというだけの話で、“保守派”のみなさんにとっては都合のいい話ではないでしょうか。それとも、その「保守」の看板は偽りですか。
 このシリーズ担当者として、4回目までを担当した社会部・安藤慶太、政治部・榊原智、峯匡孝、外信部・田中靖人、雑誌正論編集部・小島新一各記者の名前が挙げられていますが、今回の担当者の名前はありません。安藤記者の文体ではないので榊原“ウインカー”記者か小島記者と思われますが、こういう無責任なミスを許容する、あるいは手続きを無視する非民主的な姿勢は、改善してほしいものです。
 
 二院制の話が出たので、メモしておきます。世界中見ても、一定の規模を持つ国で一院制かつ議院内閣制という国はおそらくないでしょう。全部は調べきれませんが、少なくともG8ではそのはずです。多くの国で、議院内閣制なら二院制、一院制なら大統領制あるいは大統領制と議院内閣制の併用といったかたちで、政治に「ねじれ」を持ち込むようになっています。日本の二院制・議院内閣制がなにか特殊なものであるかのように言う一院制論者は、ものごとをあまりに単純に考えすぎています。民主主義のコストは、必要があるから支払っているのです。この点を見落としてはなりません。

*1:でその3日は、こちらもちょっと忙しかったのでさぼっていました。一緒に歌ったり、ワンダバ言ったりに。