黙然日記(廃墟)

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産経野口記者の不愉快。

「【軍事情勢】日中「徳」に向かう立ち位置」:イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/china/559069/

 宿題がたまるばっかりなのですが、29日付の野口裕之記者のコラムから。
 中国の易姓革命と日本の天皇制を比較し、徳のない天子が交代する易姓革命に対して、天皇は常に自らの徳を省みられてきた、日本こそ中華、中国は日本に影響を与えていない、《愉快である》。だいたい、そういう内容です。いかにわたしが天皇制を肯定する立場であるとしても、読んでいるだけでこちらが恥ずかしいというか、いたたまれない気持ちになります。天皇制は唯一至高であるがゆえに尊いのであり、どこかをsageることでしかageられないような安っぽいものではありません。また中国史を尊重する立場からは、それがあまりにも早くから始まり時間も長いがゆえに夏・商(殷)・周の王朝交代の歴史を糊塗することもできず、やむをえず易姓革命の概念が始まったという点を指摘せざるを得ません。
 歴代天皇が徳を省みられたという点にしても、中国歴代王朝の天子(王・皇帝)がそれをしなかったとでも思っているのでしょうか。実際に革命の歴史があるがゆえにこそ、「徳を失う」ことへの恐怖は歴代天子が持っていました。そしてこの中華の歴史を知っていればこそ、天皇も、日本でも易姓革命が起こりうることを踏まえていたはずです。新渡戸稲造がなんと言ったか知りませんが、日本が中国からいっさいなにも学ばなかったというなら、野口記者も漢字を使うのをやめ、箸で米飯を食べることもやめ、貫頭衣をまとってドングリを石器で潰していればいいでしょう。なにが《愉快である》ものですか。いつもならここで反語として「野口記者こそ愉快」と返すところですが、このコラムはただもう不愉快なだけです。