黙然日記(廃墟)

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産経、新憲法起草を始める。他。

 春ですねえ。産経が、なにやらトチ狂ったことをおっぱじめやがりましたよ。

本紙が新憲法起草へ 安保環境激変に対応 委員会初会合「国新たにする覚悟で」+(1/2ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120327/plc12032706590007-n1.htm

 「国民の憲法」起草委員会は26日に初会合を開き、来年5月までに要綱を策定し、同6月の創刊80周年に間に合わせるそうです。メンバーは田久保忠衛委員長以下、佐瀬昌盛西修大原康男百地章の各委員だそうです。いちおう大学の教授・名誉教授クラスで、産経新聞社からのメンバーは入っていません。
 田久保委員長は「現憲法制定時、中国の膨張を想定されていなかった」と時代に合わないことを真っ先に述べたそうですが、当時は既に東西冷戦の萌芽があり、日本はソ連と対峙する最前線のひとつでした。「次の戦争」を考えていなかったわけではなく、考えた上で、それでも不戦条項を入れるべきだというのが、当時の日本国民および連合国(米国)の判断でした。また、誰の発言かわかりませんが会合では《「戦後的価値観を生んだ現憲法は個人を絶対視し、家族や国家を軽視する風潮を生んでいる」》という発言もあったそうです。これは、自民党の新憲法草案を超えるトンデモな草案が出てくるのではないかと、わくわく どきどきしてしまいます。

【新憲法起草】現行憲法、多くの不備+(1/2ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120327/plc12032708070013-n1.htm

 現憲法に対しては当然のごとく、真っ先に九条に文句をつけています。結局、議論はここに集約されるのでしょうね。なお、憲法前文の《平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼》は、連合国の諸国民であり北朝鮮などは含めるべきではない、というのがわたしの解釈であることは、以前にも述べました。
 天皇を元首と定義していない(別に定義しなくても外交儀礼上は明確に元首と扱われています)、政教分離を厳密に解釈するな(政教一体が理想)、家族についての規定を設けろ(国民主権の侵害です)、国民の権利ばかりで義務が少なすぎる(憲法の定義をそもそも理解しているのでしょうか)、改正が困難なことが問題(国民の大半が同意するような改正なら簡単にできるようになっています)などなど、いままで産経が撒き散らしてきた「憲法というものへの無理解」を集大成したような記事です。
 現憲法に緊急事態条項がないことは、環境権や知る権利の明記が欠けていることと並んで、欠陥の一つではあるでしょう。この記事の指摘で正しいと思えるのは、この一箇所ぐらいなものです。ただし、私権の不必要な制限を前提にしなければ、必ずしも憲法で規定すべき性質のものではありません。
 ここまで間違いが多い文章というのも、書こうと思って書けるものではありません。すげえや。

【主張】新しい憲法へ 欠陥正さねば国もたぬ 誇りと自立心とり戻す内容に+(1/3ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120327/plc12032703200001-n1.htm

 《憲法と国のありようを見つめ直し、日本の再生に全力を尽くしたい》とか、《日本の安全が脅かされていることの根幹に憲法がある》とか《戦後民主主義の弊害だ。自らの国を自らの手で守ろうとする自立心と気概が失われれば、日本に未来はない》とか、威勢のいいことばかり書いています。なにか根本的な勘違いをしてなきゃいいのですが。
 《北朝鮮工作員に拉致された事件も、日本が自立した主権国家として強固な防衛体制を敷いていれば、防げた国家犯罪だった》というのは、いったいいなにを勘違いしているのでしょうか。軍事政権下の韓国でも拉致事件は起きています。
 《占領時につくられた米国製の憲法が日本の無力化を目的にしていたことを忘れてはなるまい》。ええ、軍国日本の無力化と復活阻止を目的にした憲法であることを、忘れてはなりません。産経を筆頭とする反動勢力の跳ねあがりっぷりを見れば、不戦条項がいかに必要なものであったか、あらためて確認できます。
 非常事態の対応については上にも述べましたが、検討の価値はあります。ただし、大震災時の菅直人政権による対応に、重大な不作為があったという指摘は疑問です。そうは思えませんが仮にそうだとしても、それを憲法の責任にする意味がわかりません。憲法墨守の立場を「九条教」と揶揄することがありますが、「少年犯罪は憲法のせい」「震災対応の不備は憲法のせい」では、「逆九条教」とでも言うべきでしょう。
 震災復興における今上および皇族方の果たされた役割について否定するものではありませんが、なぜここで言及しているのか、意味不明すぎます。憲法の欠陥を皇室が補ったと言い張るなら、それは明確な政治利用でしょう。いや、《天皇を戴(いただ)く日本の国柄を明確にし、自衛隊の役割を憲法で明記する必要性》と続くのですが、この部分は何度読んでも理解できません。産経に理性があると仮定しているからでしょうか。
 《日本に生まれた子供たちが日本の歴史に誇りを持ち、将来に希望を持てる新憲法づくりを目指したい》が結語です。子供たちが本当に日本国を誇れるのは、暗闇の歴史を書き換える歴史修正主義によるものではなく、暗闇から脱した平和と希望の国造りが今も続いていると自覚できたときです。現行の日本国憲法は、改正が必要だとわたしは考えています。しかしそれは微修正の範囲でよいので、「国民主権」「戦争抛棄」「基本的人権の尊重」という根底を変える必要は、まったくありません。
 産経の持ち出す憲法草案がどんなものになるか。来年の話をすると鬼が笑いますが、来年5月にはたぶんわたしは大笑いしていることと思います。笑えない状況にはならないことを願いつつ。

【風を読む】論説委員長・中静敬一郎 「眠り込んだ魂」目覚める時だ - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120327/plc12032707460009-n1.htm

 論説委員長によるこれも、憲法草案絡みのコラムです。「主張」ではあれもこれもと並べていましたが、中静委員長は防衛問題(九条改正)が眼目であることを明確にしています。
 コラムでは内閣府世論調査を引用し、二十代の多くが自衛隊や防衛問題について関心がない理由を「わからないから」と回答したことを踏まえ、それは防衛問題について教えてこなかったせいだ、とドヤ顔しています。いまどきの若い人は(若い人に限らないかもしれませんが)、「興味がない」「関心がない」「どーでもいい」物事を「わからない」と表現することがよくあります。これは、内閣府調査の質問項目にも問題があるでしょう。関心がない理由を尋ねられて、「関心がないから」以外に答えようのない場合はよくあります。また、関心がないから知識もないという循環も確実にあります。いくら学校で知識を与えたって、同じことです。そこを我田引水で、失われたものは志だ、だから憲法改正が必要だ、と、中静論説委員長以下の産経新聞記者が本気で考えているのなら、憲法草案作りそのものが巨大な勘違いの産物ということになります。

【正論】慶応大学教授・竹中平蔵 東電の「実質国有化」に問題あり+(1/3ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120327/plc12032703190000-n1.htm

 竹中氏の、いつものお気楽な新自由主義原理主義です。東電国有化が問題なら、自公政権末期に決められた日航国有化の方がよほど問題あると思うのですが、そこには触れないのでしょうか。
 《雇用調整給付金は労働の効率的な移動を妨げ》ているという指摘は、さすがパソナグループ会長ですね。

2ちゃんねる管理会社、実体なし…日本で運営か : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120327-OYT1T00043.htm

 今日の産経には敵いませんが、読売も馬鹿記事を載せているので、ついでに紹介しておきます。2ちゃんねるの運営会社というか 2ch.net ドメインを管理している Packet Monsters Inc, がペーパーカンパニーであることを、わざわざシンガポールの現地まで調査に行った貴重な記事です。汲み取り便所を覗いて「やはり汚い」と確認するぐらいの重大スクープですね(棒読み)。
 ただまあ、ちゃんと取材するだけ産経よりはマシでしょうか。警察の調査に協力しただけかもしれませんけれど。