黙然日記(廃墟)

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産経論説委員、独裁者を望む。他。

【一筆多論】内藤泰朗 強い指導者を待望する+(1/2ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120326/plc12032608120002-n1.htm

 ロシアにウラジーミル・プーチン大統領、北朝鮮の後継者に金正恩氏、中国次期国家主席習近平氏と、近隣諸国に新しい強力な指導者が現れているのを受、日本にも同じように強力な指導者を、と求めています。いちおう民主主義体制をとっている他国の指導者を独裁者呼ばわりすることの正当性はともかく、そうした独裁者に対抗するため日本にも独裁者を、というわけです。昨日の石橋文登副編集長の「シンプルな政治を」に続く、そしてもっとあからさまな、産経の独裁待望論ですね。昨日も書きましたが、独裁制はシンプルで効率が良く、それだけ強力です。ただ、それではいかん、ということが、北朝鮮などを見て日本が学んできたことでしょう。
 そして実際のところ、強いリーダーが現れると産経は腰が引けてしまいます。決して民主主義の価値を尊ぶからではなく、たぶん感情的に。日本の歴代総理で例外的に強烈なリーダーシップを発揮した菅直人氏を産経(や他メディア)がどう扱ってきたのかも、ここで指摘しておくべきでしょうか。

【from Editor】定数ありきが間違い+(1/2ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120326/elc12032608010000-n1.htm

 これはまた暴論ですね。大野敏明編集委員です。いや、一票の格差是正のために*1人口ごとに選挙区定数を配分して全体の定数という概念をなくしてしまえというのは、暴論ではありますが一聴の価値はあります。大野記者の乱暴なところは、自らの試算で導かれる全体の定数が174人なのにそれでもいい、ついでに参議院も廃止してしまえ、と言い出すあたりです。それで歳費がいくら削減できるかは知りませんが、削減できるコスト以上の損失が明らかなことを認めるわけにはいきません。
 議員の定数が少なければ少ないほどいいならば、極言すれば3人いればいい、いや1人でもいい、ということになります。全国で1人を選ぶのはこれは大統領制ですが、(まともな)大統領制は議会制と併存し、お互いを牽制しあう仕組みになっています。結局、そうした相互監視の仕組みがなければ民主主義の制度というのは成り立たないことを、繰り返しますが、人類は経験的に学んできました。
 一票の格差をなくすためには、小選挙区制なら毎回でも区割りを見直すこと、あるいはできるだけ大選挙区に近づけることが有効です。大野記者の案は都道府県単位で区割りしているので、現在の参勤地方区のように、小選挙区大選挙区が混在するおかしな仕組みになってしまいます。参院地方区の改革案としては一考に値しますが、都市集中が進む日本では、そもそも都道府県単位の区割りが必要なのかから見直さねばならない状態にあることも考えねばなりません。いずれにしろ、論外ということです。こんな適当な説を堂々と社会の公器に発表できるのですから、新聞社の編集委員というのはなってみるものですね。

*1:産経はこれを「格差是正」という見出しにするので、まるで自民党が経済格差是正に動き出したかのような、おかしな印象を与えます。