黙然日記(廃墟)

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産経抄の視点。

産経抄】2月21日 - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120221/trl12022103050001-n1.htm

 光市母子殺害事件とその後の裁判の敬意については、コメントするのも気が重いのですが。
 産経には、「死刑にされる側の視点」というものが、まったく無いように思います。そりゃ人でなしの所行ですが、人でなしだって人間です。感情というものが一応あるでしょう。また、この事件の裁判に死刑廃止論が入り込んでいないことは踏まえつつ、「死刑」全般に目を向けると、それは「国家による殺人」以外の何物でもないと考えられます。しかも、予告付きでほとんど回避不可能なものだという残虐性を持っているのです。
 被害者の感情を無視していいとは言いませんが、人間の心は宇宙よりも広くて深く、その光とともに闇もまた無限大です。どこかで断ち切るために、人間は法律という仕組みを発明しました。人類史上初の法律であるハンムラビ法典は、「目には目を」、一定の被害への仕返しは一定の範囲まで、復讐は無限に繰り返されてはならないと規定しました。たとえ被害者遺族が加害者を惨殺したところで、心の闇はそこに止まらないのではないでしょうか。被害者遺族もまた人間であり、感情を持つからです。
 産経は、被害者遺族の感情を盾にとり、《加害者の権利が優先される刑事司法》をdisっていますが、被告側の人権が平等に守られない司法がどんなに恐ろしいものか、わかった上で言っているのでしょうか。あらためて問えば「わかっている」と口先で言いそうですが、このコラムからはそうは読みとれません。被害者遺族の感情なんて、本当はわかりっこありません。「被害者感情」を持ち出す議論には、冷静な対応が必要です。

【主張】母子殺害に死刑 少年法の適用年齢検討を+(1/2ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120221/trl12022103210002-n1.htm

 はいはい厳罰化。短慮によって起こされる、いわゆる「カッとなって」「後先考えずに」という事件には、厳罰化は無意味でしょう。また、短絡している人が多いと思うのですが、「厳罰化」はそのまま死刑の存続あるいは拡大を意味しません。「厳罰化」の効果については、たとえば飲酒運転の厳罰化により明らかに事故件数が減少していることは評価すべきでしょう。しかし粗暴犯罪について、これ以上の厳罰化が意味を持つのか、それは単に被害者感情に名を借りた公衆私刑への欲求なのではないかという点を、じゅうぶんに考慮する必要があるでしょう。