黙然日記(廃墟)

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産経古森氏への仮説。他。

【あめりかノート】ワシントン駐在編集特別委員・古森義久+(1/2ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/life/news/111202/art11120202570000-n1.htm

 なんとなくひさしぶりに、古森義久氏の文章にツッコんでみます。古森氏といえばご存知、親米愛国派の代表格ですが、この二つの矛盾した立場はどう止揚されるのかがいつも議論の的になります。ここでは「古森氏は、米国で日本が高く評価されることにしか興味がない」という仮説を立ててみます。
 この「あめりかノート」は、パールハーバー70周年を前に、イアン・W・トール氏の著作『太平洋の試練』なる書物*1の紹介です。しかし、「Ian W. Toll」氏を《イアン・トール氏》、「W W Norton & Co Inc; 」を《ノートン社》と紹介するセンスはなんとかならないものでしょうか。「W」という文字がよほど嫌いなのでしょうかw 
 思春期に日本在住経験のあるトール氏が、日本への親しみを込めて公平な視点で太平洋戦争(の初期)を描いた書物だ、日本が戦争に追い込まれた状況もちゃんと描いている、山本五十六への評価も高い、ということで、古森氏は大喜びです。上記の仮説に当てはまる書物だとしたら当然なのですが、実際のところはどうなのでしょうか。わたしは(もちろん)同書も米国の類似書も読んでいないのですが、単に公平な視点で書いているとか、たまたまトール氏が日本側にも視野を広げただけといった理由で評価しているのだったら、なんだかなあと思います。
 副題からすると、同書には1943-1945の続編が期待されますが、こちらは古森氏を大喜びさせることができるような内容でしょうか。見守りたいと思います(仮に読んで気にくわなかったら黙殺するだけでしょうから、その結果を知ることは難しいでしょうが)。

産経抄】12月2日 - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/111202/crm11120202520002-n1.htm

 なんだか、わけのわからない文章です。話を詰め込みすぎ、視点がぶれすぎて、筆者には諒解できているのでしょうが読者は置いてけぼりという、「産経抄」における一つのパターンの典型です。他にいくつかのパターンがあり、その繰り返しでたいていは駄作コラムなのですが。
 “たまに ほんの数日 産経抄に正気の時間が与えられることがある 産経抄は顔色を隠してほのめかす これまで書いてきたことは間違いだと”。
 文中に引用されている、認知症の母を描いた池下和彦氏の詩をパロディー化すると、こんな感じでしょうか(池下氏にはもうしわけないですが)。池下氏のご母堂の「すまない」と、おそらく冤罪である事件の被害者(元受刑者)の母に対する「ごめん」は、同じ謝る言葉でも、あまりに質が違いすぎて、イメージを重ねることもできません。さらにそこに、事件の被害者(亡くなられた少女)の母親の視点まで入れ込まれては、混乱するばかりです。いっそのこと、北朝鮮による拉致被害者の母親の視点まで入れ込めば、「ああ、いつものばかな産経抄だ」と思えるのですが。
 このコラムをまとめるとしたら、「悪いのは警察・検察による誤認とでっち上げ」という視点を導入するしかありません。司法取引を悪用した証言でっち上げなど、たいへん悪質な事例であり、冤罪事件においてはもっとも優先すべき視点なのですが、産経はそれだけは絶対に認めないのですよね。

*1:たぶん "Pacific Crucible: War at Sea in the Pacific, 1941-1942 ",ISBN:9780393068139。たしかに話題の書のようで、Amazon.co.jp直販では品切れ状態です。