黙然日記(廃墟)

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産経「主張」の大正観。他。

産経抄】7月31日 - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110731/plc11073102530003-n1.htm

 なぜ川島正次郎を持ち出してきたのか、よくわかりませんが、まあいいでしょう。陽気な政治家を引き合いに、現在の海江田万里経産相がどうの、という対比をしたかったことはわかります。海江田氏の情動について責めるのはあまりに気の毒だと思いますから、わたしはやりませんが、」にそんな神経を要求しても無駄でしょう。
 ところが最後になって、「でも菅首相よりマシ」といきなり方向転換してしまいます。口笛吹いた陽気な寝業師を褒め称えるなら、菅首相こそ現代のそれにあたるのではないですか。

【主張】「大正百年」 復興へ民力活用学びたい - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110731/dst11073102540002-n1.htm

 今年が大正100年に当たることは正月に気づいていたのですが、産経的には元号が変わった7月31日が区切りということですか。
 小松左京氏に『大正時代の研究』という著作があることを、今回初めて知りました。ノンフィクションでもどれも面白そうな仕事をされた方で、本当に――。小松氏はこの著作で、「大正時代」を日露戦争から満洲事変までと定義しているようです。元号にはこだわらず、元号「大正」に代表される時代ということでしょう。こう区切るとだいたい26年間で、15年戦争期や元号「戦後」*1に比べ、さほど短くはありません。
 その「大正時代」は、戦争がなかったために自由と繁栄を極めた時代であることは知られています。後半の1923年に関東大震災があり、その復興はそれまでの繁栄の活力によるものだ、という「主張」の指摘は正しいでしょう。
 しかし、当時とは何もかも違い、たとえば最低限の生活水準も比較にならないので*2、復興の遅れを単純比較することもできません。まして、民間活力と称してまたぞろ「原発を再開しろ」と言い出すにいたっては、さすが産経と舌を巻くしかありません。100年近く前を俯瞰しているために、タイムスケールが狂っているのではないでしょうか。

*1:元号「戦後」の期間ははっきりしないのですが。1945年8月15日に始まったのは確実ですが、あとはだいたい20〜30年ぐらいですかねえ。

*2:「大正時代」に文化住宅が生まれましたが、それ以外の住宅は文化住宅ではなかったわけです。庶民層は江戸時代と変わらぬ長屋暮らしでした。