黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経抄の小松左京観。

産経抄】7月30日 - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110730/plc11073003420008-n1.htm

 いやこれはあんまりだ。想定していた中で下から2番目にひどいパターンです(最悪は『日本沈没』にしか触れないもの)。
 どういうものか産経は『日本アパッチ族』がお気に入りのようで、追悼記事でも筆頭に挙げられていました。大阪が主舞台の唯一の長編だからでしょうかね(『首都消失』もありましたが)。小松氏も大阪を愛した人でしたが、産経新聞もなかなか旧大阪新聞を脱せられないようです。
 どうでもいいけど、『日本アパッチ族』執筆のきっかけが、ラジオのなくなった小松家で夫人を慰めるため、というのはいいとして、「ラジオが故障したため」というのは初耳でした。たいていの自伝等では「ラジオを質入れしたたため」とされていますが、どこかにそういう記述があったのでしょうか。
 そして最悪のパターンのひとつである「最後で無理矢理の政権批判」もやってしまっています。なんで《もう衆院解散・総選挙しかない》のか、論理的な説明がいっさいありません。『日本沈没』には、「政治家の行動が理想的すぎる」という批判があり、たしかに与野党対立すらなく簡単に政府が一丸となってしまうのですが(しかしそこまで描いていたら全十二巻になりそれでは売以下略)、真の国難にあたって政治家が足の引っ張り合いをしないことは、生き残りのためのプロジェクトを成功させる最低要件でしょう。上の批判を踏まえて逆に言えば、『日本沈没』では国難に際する理想的な政治のあり方が描かれているわけですが、抄子にはその点を踏まえてもう一度読み返してみることをお勧めします。読んでも無駄っぽいけど。