黙然日記(廃墟)

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産経抄の典型性。

産経抄】6月30日 - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110630/plc11063002570001-n1.htm

 今日は今年の折り返し点だから、というわけでもないでしょうが、産経詭弁論理術の集大成のごとく、短いコラムの中であらゆるテクニックを駆使しています。さまざまな典型を見ることができる、お勧めの一本です。
 まず、「脱原発を争点にした解散総選挙」についての論なのですが、これ自体がそもそもシャドーボクシングです。少なくとも具体的な可能性は見えていません。最初に再生可能エネルギーによる脱原発に、反対する人はほとんどいないと、肉を切らせて骨を断つ戦術に出ます。「原発を即時全廃すればエネルギー需給が破綻する」という指摘をして骨を断ったつもりのようですが、これは毎回のように使っている藁人形叩きです。そんな主張を現実的だと考えている人はほとんどいません。
 続いて曾野綾子氏の最新コラムと渡部昇一氏の名著から引用し、権威付けも忘れません。熱中症で倒れるのは弱者である高齢者だと、時事的な話題を取り入れながら弱きを助ける姿勢を見せますが、いつもの新自由主義、自助努力はどこへ行ったのでしょうか。ここはお得意のダブスタというわけです。本当の弱者は、エアコンすら買えない人たちなのですが。
 さらにまたお得意の、産業空洞化論。電力供給が不安定になり価格高騰すれば企業は海外へ、というわけですが、どこへいくのでしょうが。現在世界一の電力品質と世界有数の高い電力料金を持つ日本から、電力価格だけで逃げるならとっくに逃げているでしょうし、品質が多少落ちてもわざわざ移転する先がどれだけあるのか、いずれも示されていません。
 最後は子供を出して泣きをとる、これは産経抄にしては珍しい手法ですが、それだけに唐突な印象を受けます。肉を斬らせて複雑骨折した、というオチでよろしいでしょうか。