黙然日記(廃墟)

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産経抄の拷問観。

産経抄】6月6日 - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110606/crm11060602470001-n1.htm

 なにか他人様の作品をマクラに持ってくるというのが、「産経抄」のひとつの定番手法になっているようです(今日は『鬼平犯科帳』)。引用や説明で半分の字数を埋められるから楽なのでしょうが、ペテンが煮えくりかえっていた時期を除けばもう一週間近くこれが続いていて、そろそろうんざりです。たまには玉川上水あたりでも散歩しなさい。
 取り調べ可視化を《圧力》《犯罪捜査は困難をきわめる》と受け取ること自体が、鬼平時代の拷問による取り調べを肯定する発想です。時代劇の拷問シーンには熱烈なマニアが存在しますが、そうしたファンタジーと現実とは異なります。現代でも、孫の名前を踏ませるとか、事実上身動きがとれないようにして長時間立ちっぱなしにさせるとか、信じられないような心理的拷問が行われているからこそ、可視化の必要性が叫ばれているのです。冤罪の危険性を抜きにしても、これは大きな問題です。
 もちろん、組織暴力がらみの乱暴な大金強奪事件で、冤罪の可能性もおそらくないだろう人物では、事情が違うかもしれません。しかし現代の犯罪集団では、仮に拷問したって仲間の居場所を吐かせることはできないでしょう。最初から知らないものは自白しようがありません。他人様の作品を引用するにしても、引用のしかたがあまりにトンチキで、この筆者は単に拷問マニアではないのかという疑いすら浮かんできます。いえ、個人的かつ合法的に楽しむならそれでもまったくかまいませんけれど。