黙然日記(廃墟)

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産経のかけはなれた記事。他。

東日本大震災】震災の実態とかけはなれた政府・民主の認識 議事録で明らかに+(1/2ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110322/plc11032201300004-n1.htm

 政府・民主の実態とかけはなれた産経の認識 記事で明らかに。エントリのタイトルとしては長いのでツカミにしますが、まさにそんな感じです。リード文で指摘されているのは、枝野幸男官房長官の“自画自賛”と、岡田克也幹事長の緊張感の欠如ですが、さて本文ではどうなっているでしょう。
 まず見出しの《会議出席者が作成した議事録》ですが、与野党の合同会議における《会議出席者が作成した議事録》を産経新聞が入手したのだそうです。……それ、議事録じゃないですから。「出席者のメモ」というんです。言うまでもなく野党議員から下野なう産経新聞に渡されたものでしょう。
 東電の計画停電については、現在も強い批判があり見直しも提案されています。その責任の一端が政府にもある、枝野長官にもことは確実です。その点を批判された枝野長官が《「当初の計画通りだったら大混乱だったが、東京電力経済産業省に任せず政治主導でやってよくなった」》と反論したことが、《自画自賛》にあたるのだそうです。東電の当初計画がいかにひどかったかを想像させるエピソードですが、自画自賛と叩かれるほどの話なんでしょうか。
 岡田幹事長については、実務者会議の時間を1時間と区切り、議論が続いているのに時間通りに終わらせることだけを気にしていた、という批判なのですが、これも疑問です。議論は大切ですが、今はどんなビジネス書を見ても、「だらだら会議をするな、時間を区切って最小限にしろ」と書かれています。特に、こうした緊急時の実務者会議で、ただでさえ長くなりがちな政治家の演説をさせているヒマはありません。議長役が心得て、定刻通りに進行させるのは当然のことです。
 こうした岡田氏には、しかし緊張感が欠けている、という批判もこの記事にはあります。さいたまスーパーアリーナに町ごと避難した福島県双葉町を視察したあと、周囲に《「アリーナには人もモノもあり〜な」》と漏らしたのだそうです。駄洒落自体はあんまりなレベルですが*1、岡田氏もまさか新聞記事になって批判されるとは思わなかったでしょう。双葉町の避難は、今回の災害対策でもっとも成功した例の一つで、その視察を終えた後に緊張感が一瞬ほぐれた気持ちはよくわかります。
 背景をわざわざ調べなくても一つの記事の中だけで、リード文の煽りと本文の記述の拍子抜けっぷりに激しい落差があるのですから、「産経は実態がわかっていない」と批判されてもしかたないところでしょう。建設的な政府批判ならいいのですが、こんなレベルのことを続けていたら、メディアがその機能を果たせいてないと判断されてもしかたのないところです。産経のせいで。

リビア爆撃 国民を守る人道的介入だ - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/498222/
【主張】リビア爆撃 国民を守る人道的介入だ - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110322/mds11032203060001-n1.htm

 震災後初の、震災関連ではない「主張」なので、まず記録の意味で。こんなことにならなければ、日本でも圧倒的にトップニュースだったんですけどね。
 今回の軍事行動はフランスが主導しているのですが、米国様が参加した多国籍軍を、その観点から全面支援するのは、産経としては当然です。一方で、地上部隊を投入すると泥沼化するから短期間の空爆にとどめるべきだ、と、ほんのわずかな理性を示しているあたりが、産経「主張」にしては珍しいところです。
 《米国をはじめとする同盟国》というのは、具体的にどこのことでしょう。日本国は明確な軍事同盟を結んでおらず、条約による軍事的協力関係も米国としか結んでいません。NATOとは(日米同盟を前提として)利害が一致することは多いのですが、今回もドイツが明らかに手を引いているように、なにごとも一枚板ではありません。多国籍軍に参加している各国が、同時期の日本の大災害に最大限の救助の手を伸ばしてくれたことは本当に感謝するべきですが、それとこれとは別の話です。

*1:ここでわたしは、「アんまリーナ」と書きたい気持ちを歯を食いしばってこらえています。