黙然日記(廃墟)

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産経抄が懸ける命。他。

産経抄】3月17日 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/497013/
産経抄】3月17日 - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110317/dst11031703070007-n1.htm

 「一生懸命」が本来は「一所懸命」で、一箇所の領地に命を懸ける武士の覚悟を意味していたことはすでによく知られていますが、現代において、責務について「一所(一生)懸命に取り組む」と発言しても、大げさと言われることはありません。「命懸けで取り組む」も、同じようなものでしょう。和語である「いのちがけ」は漢語の「けんめい」と違って本来の意味がわかりやすくなります。そのため、政治家などがこう発言すると「何を大げさな」という気持ちになることはありますが、「そのぐらいの覚悟で」を補って聞くのが正しいでしょう。
 安全な場所から、というなら、事故現場に現地入りした首相を非難しておいて、自分は大手町から一歩も動かずに首相の「命懸け」発言を批判する抄子は、なんなんだ、という話になります。もちろん、それをさらにネット上でおちょくっているわたしはなんなんだ、という話もあって、一昨日のコメント欄でもそうした批判をされましたが、それはそれとして甘受いたします。
 いちばん偉いのが、原発事故の現場で戦っている人々、そして同じぐらい、津波被害の現場で創作・救出に当たっている人々だということは、あらためて述べておきます。
 実際に命懸けで必要なものごとに立ち向かう人たちを、わたしは限りなく尊敬します。「誰かがやらねばならないことだからやる」という姿勢を、尊敬します。「命懸けだから」という理由だけで、賞賛はしません。安っぽいヒロイズムを(産経が)賞賛する危険は言うまでもないでしょうし、それがむしろ自他の生命を軽んじる意識を生むのではないかという点でも心配です。

東日本大震災】常識を越えた自衛隊10万人“全軍”動員+(1/3ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110317/plc11031700140000-n1.htm

 梶川浩伸記者の記事。チェックし損ねていましたが、野口裕之記者に続く軍オタタイプのようで、文体がそっくりです。
 現在の、自衛隊員24万人中10万人を動員する態勢が、菅直人首相の思いつきであって防衛省にも連絡せず発表された、自衛隊側はそれを言われたとおり実行しているだけ、という報道ものですが、本当でしょうか。いくらなんでも思いつきで発表できる話ではありませんし、兵站や交替、通常の防衛任務要員が必要であり、10万人動員は短期決戦的な性質のものであることぐらいは、首相だって理解していると思うのですが。
 産経の記者には、民主党やきゅへ宇社会党の政治家は自衛隊の現状や軍事全般についていっさい無知であり、拒絶的であり、自衛隊のすべてを否定するか無茶を要求するか二つに一つだ、という思いこみがありそうに見えますが、これがわたしの思いこみでなければ幸いです。そして菅首相の防衛に関する意識は、武器紙輸出三原則見直しにまで踏み込む積極史跡であり、今回も自衛隊出動をいっさいためらわず米軍の協力も受け入れていることを、思いこみのある人は見ていなさそうに思います。それにしても「防衛省に話を通さず10万人」が本当ならば大ニュースで、こんな記事の片隅にだけ載せておくのはもったいないスクープです。少なくとも、防衛大臣統合幕僚長には話を通さねば(間に誰か入ったかもしれませんが)、いくら自衛隊の最高指揮官でも決定できるものではないはずです。
 最後を「ガンバレ自衛隊」的にまとめているのはもちろんよいのですが、ところで、《防衛大学》ってなんでしょうね。