産経記者の非常事態。他。
[opinion]思ったこと。
原発事故も未曾有の事態ですが、そちらと停電の報道ばかりで、地震・津波の被害者がどれだけ救出された、あるいはその他の情報が、これだけの災害としては信じられないぐらい少なくありませんか。伝えられるのは大づかみな数ばかりです。取材リソースの制約もあるでしょうし、紙面は限られているでしょうが(放送のニュース枠は十分あるはずです)、電子版でも少ないのは気になります。また、12日未明の長野・新潟県境付近を震源とする地震は震度6強を記録し、太平洋沖とは独立した平成23年中越地震と呼べるでしょう。それにしては、ただでさえ雪崩の季節なのに、第一報以後の情報がほとんど伝わってこないように思います。
放射性物質や停電と違って、首都圏に無縁だからでしょうか。とか言っていたら今、静岡県東部で震度6強が発生しましたが……。
そのほか。
【放射能漏れ】なぜ、首相は非常事態宣言を出さないのか 依然、パフォーマンスばかり+(1/3ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110315/plc11031513410030-n1.htm
もう最近は、見出しだけで「この人が書いた記事だ」とわかるようになりました。エントリにタグを付けましたので皆様にもおわかりだと思いますが、阿比留瑠比記者です。
コメント欄でid:pipisanさんに教えていただいたところによると*1、石垣町長がかつて「非常事態だ」と発言した事実を、櫻井よしこ氏が勝手に《非常事態宣言》と置き換えてしまっているそうですが、産経関係の人たちは非常事態宣言が好きですね。ちょうどバーレーンで非常事態宣言発令という報道があったので、今の日本とバーレーンの状況にどういう共通点があるか、よく見比べてほしいものです。
見ていきましょう。400ミリシーベルトというのは大きな値で、わたしも最初読み流してからあわてて単位を確認してしまいました。これについては直接言及があってもよかったとは思いますが、なんでもかんでも首相の口から表明するのが、よいリーダーシップではないでしょう。
地震翌日の原発現地視察を批判しているのは、これは昨日も指摘しましたが、安倍晋三首相(当時)がもっとひどい真似をやらかしたことを無視しているのみならず、よりによって阿比留記者が言うなというリアクションが当然出てくるところです。あのとき鑑定詰めだった阿比留記者は、安倍氏のあまりに非常識なパフォーマンスを止めようとしたのでしょうか。《首相官邸で国民のために重大決断を下すことが首相の仕事であることを理解していない》とか大真面目に書いているあたりでは、本当に吹き出してしまいました。どんだけお笑いなんだこの人は。
かと思えばそのあとに、15日朝に「陣頭指揮」と発言したことをもって、いままで陣頭指揮をしてこなかったのか、と揶揄していますが、さっきの「官邸で決断」という記述と矛盾していませんか。そもそも「陣頭指揮」の意味がわかっているのでしょうか。
《避難指示の範囲は当初の半径10キロからじわじわと拡大》。当初は3km以内だったように思いますが、そのあと10km、20kmと2段階しか拡大していません。今日になって30km以内になる前から「じわじわ」「小刻み」という表現を産経はよく使っていますが、どうしろというのでしょうか。そもそも事態が進展しているから範囲が拡大しているので、同じ状況のまま避難範囲を拡大させているわけではありません。
そして、先のニュージーランド地震にならって非常事態宣言を、と勧めています。非常事態宣言を出すとどうなるのか、それによってなにが変わるのでしょうか。細かい点はともかく、簡単にまとめれば「人の行動をコントロールできる」ようになります。これにより、ガソリンやトイレットペーパーの買い溜めは抑制できるかもしれません。
さて。今、わたしたち全国民が戦わねばならない相手は、なんでしょう。まず第一に、海水であり、土砂であり、倒壊した家屋であり、寸断された道路であり、拡散した微量の放射性物質であります。そして切断されたライフラインの復旧、特に電力の(計画停止を含む)安定供給にも力を注がねばなりません。それから、治安と衛生もこれから問題になる可能性があります。
では、誰が海水を街の中に流し込み、誰が放射性物質を意図的に撒き散らしたでしょう。そんな人間はいません。ライフライン復旧を怠ける人間もおらず、いまのところ(世界中の賞賛コメントを産経が記事にしているように)深刻な治安上の問題も生じていません。
人間にできることは、すでに99%実行されています。非常事態宣言を発することで、これ以上、何ができるのでしょうか。非常事態宣言を、阿比留記者は、魔法の呪文だと思っているのでしょうか。「マハリクマハリタヒジョージタイ」と唱えれば、学校の火事も消え、破壊された街は復旧するのでしょうか。
おそらく、阿比留記者もわかっているのだと思います。パフォーマンス云々も難癖なら、非常事態をなぜ出さないのかとごねるのも、単にためにする批判であって、本気でそれをされたらかえって困るということを。それでも無理矢理さまざまな例を持ち出し、本部長更迭の前例を引き合いに首相交代を求めるというアクロバットまでやってみせているわけです。
日本で災害時に治安上の問題が起こらず、したがって非常事態宣言が必要ない理由に、「日本人は恥の意識を持っているからだ」という説があります。全肯定はしませんが、そういう側面もあるでしょう。「日本人なら恥を知れ」という言い方も、肯定はしませんが、人によっては有効なはずです。
阿比留さん、あなたに「恥の意識」はありますか?
という文章を書き上げてMSN産経ニュースをチェックしていたら(ウォッチ以外に様々な事態の進展が気になっているのです)、こんどはこんな記事が出てきました。上とほぼ同じ長さの、阿比留瑠比記者による記事です。といっても、ほぼ同趣旨で一部書き換えているだけなので、大阪夕刊用と明日の東京朝刊用なのでしょうか。
この期に及んで…首相、東電幹部に「撤退すれば100%潰れる!」 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/496664/
【放射能漏れ】この期に及んで責任転嫁とは… 首相、東電幹部に「撤退すれば100%潰れる!」 +(1/3ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110315/plc11031521100044-n1.htm
《責任転嫁》とは他人に責任を負わせようとすることですが、もはや、阿比留記者が首相に“責任転嫁”しているように見えるのは、わたし一人でしょうか。
《政府が初動時に事態を過小評価したからではないか》。ここまで拡大すると予測していた人が、専門家含めてどれだけいたのか、教えてほしいものです。ていうかなんでここまで拡大してるのかも教えてほしいですが。
《辻元氏は平成7年の阪神淡路大震災の際、被災地で反政府ビラをまいた》。ビラをまく以上にボランティア(当時はまだ根付いていない概念でした)活動を熱心仁尾なったことから、今回首相補佐官に起用されたわけですが。ていうか、今回の被災地域で産経新聞が何部配達されるか知りませんが、阿比留記者こそ被災地で反政府ビラをばらまく張本人じゃないですか?
なんにしてもまあ、書き改めれば改めただけアラが出てくるのですから、本当に愉快な人ですね。