黙然日記(廃墟)

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産経「主張」の楽観性。

対中ODA 全面的打ち切りが当然だ - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/494075/
【主張】対中ODA 全面的打ち切りが当然だ - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110303/plc11030302480002-n1.htm

 まあ予想どおりというか、産経の普段の主張の通りなのですが。普通に単純に考えて、GDP第3位の国が2位の国を援助するというのはおかしな話ですが、対中ODAには戦後賠償の意味が(精神的に)含まれていたという側面もあります。これをやってしまうと、正式な賠償金と違って期限がないので際限がなくなり、いつまでも続くことになって、実際に現在のようなおかしなことにもなるのですが。
 しかし今回問題になっているのはかつてのような巨額のODAではなく、留学費用とか環境対策とか、将来に繋がったり必須のものだったりする、重要な投資のようです。こうしたものまでODA名目金額の比較だけで簡単に切っていいという産経の主張が通るのなら、米軍への思いやり予算も明らかな無駄遣いということになります。ていうか、中国にはいろいろ環境対策をとってもらう必要があり、内政干渉ができない以上(それができるのならば、人権などもっと他に干渉したいところがあります)、使い道を決めた金を渡して強制的に実行させるしかありません。できれば、黄砂対策とかクラゲ対策とか、あからさまに対象を絞り込んで援助してもいいぐらいだと思いますが。
 そして産経の主張の眼目は、このあたりの理屈よりむしろ、丹羽宇一郎駐中大使への批判のようです。「ODAを継続しないと対中関係が悪くなる(中国が機嫌を悪くする)」という、客観的な事実を述べたことが、産経には対中迎合と映り、腹立たしいようなのです。(いちおう「外相と大使の発言が食い違うのは問題」という言い訳も用意していますが、前述のとおり決定的に食い違ってはいません)。相手国がどう考えているのかを探るのが大使の重要な仕事であることを、理解していないとしか思えません*1。さらにそこから、「ジャスミン茶革命は期待しない方がいい」という発言にまで噛みついていますが、これも対中迎合ということになるのでしょうか。天安門事件ですら微動だにしなかった(ように見せかけることができる)中国政府の体制を、根拠もなく楽観視しない方がいいと思うのですが。

*1:このぐらいのことは駐中大使でなくても言えるだろう、というのは別として。