黙然日記(廃墟)

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産経「主張」の桃太郎観。

公教育の現状 これでは子供が育たない - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/489464/
【主張】公教育の現状 これでは子供が育たない - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110202/edc11020202240000-n1.htm

 2日付【主張】なんですが、今日の「産経抄」がツッコみづらかったのと、日教組教研集会に対する逆上ぶりがあまりにおかしいので紹介しておきます。先日の産経抄*1でも言及されていた事例を改めて並べたり、時間が止まったような感覚です。「日本固有の領土」の概念が混乱した教師がいるからといって、真摯に取り組めば取り組むほどそうなるのは当たり前で、北方四島もある時期まではアイヌの大地であり、大和王権の支配地は奈良盆地周辺のみ、いやそれも「東征」の結果ですから……まあやめときましょう。産経論説委員には理解できない話でしょうし。
 《そもそも桃太郎は、勇気や正義を教える昔話だろう》。いや、そんなこたぁない。そもそもは、「きびだんご」なる未知の食べものがいかに美味なのかという妄想をかき立てるところや、犬・猿・キジが同じパターンで家来になるパターナリズムの面白さを短く集約したところに最大の面白さがあって、鬼退治は形式的な目標に過ぎません。「鬼退治の勇壮さ」を強調したのは、明治以後の国定教科書バージョンや、日本初の長編アニメーション『桃太郎 海の神兵』などが付け加えたものに過ぎません。念のため、教科書バージョンで付け加わったとされる、「どんぶらこ」という音韻や、「桃から生まれた」という奇想天外にして母胎回帰願望をくすぐるモチーフにも、面白さがあるのは確かですが。いずれにしろ、「鬼の立場から『桃太郎』を解釈させる」という授業は、低学年にはどうかと思いますが、高学年向けとしては、「日本一有名な桃太郎でも世界一有名なシンデレラや赤ずきんに比べたら無名」という指摘*2と同じく、視点の転換を取り入れた良い授業でしょう。
 安倍晋三内閣による教育基本法改悪は、実は条文レベルでは妥協が多く、その部分は新指導要領に押しつけられました。産経はこれを金科玉条としていますが、かつては指導要領にさんざん文句をつけていたのではありませんでしたっけ。あまりに政治的すぎる対応ではないのでしょうか。
 テーマである公教育再生に必要なのは、誰が見ても必要な施策をすぐに行うことです。当たり前の話なのですが、教員増員や待遇改善(金銭面より負担軽減)など、どう見ても当たり前のことに「日教組が主張しているから反対」と唱える産経のような存在があるかぎり、教育再生への道は遠いと言わざるを得ません。

*1: d:id:pr3:20110131:1296482320 参照。

*2:出典を明記するとネタバレになるので、ISBN:9784091221490だけ。