黙然日記(廃墟)

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産経「主張」の優しさ観。

タイガーマスク 心温まる日本人の優しさ - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/485849/
【主張】タイガーマスク 心温まる日本人の優しさ - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110119/trd11011903200019-n1.htm

 そろそろうんざりしている方も多いかと思いますが、“やる偽善”でも続いているのは良いことです。できればこれを、“やる善”につなげていきたいところです。それにしても、群馬県に現れた最初の「伊達直人」が見事だったことは何度でも述べる価値がありますが、ところで、パチンコと手を切って久しくテレビラジオもあまり視聴しないので気付いていなかったのですが、今業界最大手のSANKYOが力を入れている機種が『FEVERタイガーマスク』だそうで。現在SANKYOの本社は東京ですが、つい最近まで群馬県に本社を置いていました。ああいやもちろん、様々な形でリメイクされることで40年前の作品の存在を思い出すことはあるわけですが……。特に今回のブーム以後はけっこうな売り上げになっていると思いますが、そろそろ社会的還元ぐらいは考えているのでしょうね。せめて過去にわたしが貢いだ分ぐらいは。
 このタイガーマスク運動*1を“やる善”に結びつけるためには、運動の継続をもちろん前提として、双方向性とある程度の組織化が必要でしょう。寄付した人たちは、できれば子供たちの笑顔を直接見たいはずです。寄付者が直接訪れるのもビデオなどの形で匿名の誰かに笑顔を伝えるのも、いろいろと困難があるのですが、ここはなんとかクリアしたいところです(巧いアイディアはないのですが……)。組織化は、全国の児童相談所や児童保護施設の連携が必要でしょう。もっとも、ただでさえ本来の仕事に手が回らないというあまりに問題のある現状で、児童相談所にその仕事をさせるわけにはいきません。さしあたり、大幅な人手の拡充があらゆる意味で必要です。
 そして児相の拡充と関連した話ですが、そもそもなぜ寄付が必要なのかを問い直す必要があります。いや、贈る側の動機は自己満足でいいのです。受け取る側の子供たちが存在することについて、もう一度考えてみませんか、という話です。親の病気や死別などどうしようもない理由も一定程度存在するでしょうが、貧困により親の手元で育てられない、あるいは、虐待のため親から隔離せざるを得ないケースがかなりの割合を占めるなら、そこはなんとか社会が引き受けることはできるのではないだろうか。貧困と虐待を撲滅することが、真の「タイガーマスク運動」になるのではないか。そこまで考えた上で、とりあえず今できることをしよう、ランドセルでも鉛筆でも現金でも子供たちのためになってみよう、という考え方をして、はじめて“偽善”が本物の「善」に変わるのだと思います。
 タイガーマスク運動に、こうした「善」への動きを取り入れていこう、という提案は、すでにさまざまに提案されています(たとえば「タイガーマスク運動」を国全体で富の再分配につなげることが日本を救う - 村野瀬玲奈の秘書課広報室)。この産経「主張」には、そうした視点がまったくありません。「あいかわらずありません」どころではなく、先日の「産経抄」からさえ後退している印象です。善意を《日本人の優しさ》などと礼賛するだけで、継続に向けた提案さえ《双方向の継続的交流が必要だとする問題提起もあるが、まず大切なのは、そこに喜ぶ子供の笑顔があることだ》とごまかして逃げてしまっています。子供の笑顔って最強ですよね。虐待防止については産経はよくやっていると思いますが(おもに社会部が)、貧困と再分配から目を逸らすために、運動の継続すら否定しているようにしか見えません。

*1:ものすごくどうでもいいんですが、「運動」を「体操」に置き換えると、しましまパンツが穿いても穿いてもすぐ取れそうなイメージになりませんか(同世代限定)。ああ、これも横澤彪氏の仕事なのか……。ご冥福をお祈りします