黙然日記(廃墟)

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産経「正論」の罪深さ。

悪意からの暴露にリスク高めよ - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/476574/

 この21日付「正論」を書いた三木光範・同志社大学理工学部教授に申し上げます。見出しは日本語でお願いします。それとも、情報をリークされたときの危険性をさらに高めて、リークされたらもっとまずいことになるように取りはからえ、ということなのでしょうか。
 いや本当に、この見出しはそうとしか読めないのですが、どうやら記事の趣旨は、漏洩した人間にとってのリスクが高くなるようにしろ、ということらしいです。あまりにトンチキな言い方なので、意味がつかめませんでしたよ。情報漏洩が違法行為だとして、それを防ぐためには、実行者にとっての「リスクを高める」のではなく、確実に罰せられるようにしなければ意味がありません。尖閣ビデオ問題で、いまだに身元確認をしていないネットカフェがあることを知って驚いたのですが、このあたりの義務づけは必要なことだと思います。その場合、ネットの匿名性が失われるという議論もあるでしょうが、掲示板サイトや動画サイトへの投稿で違法行為が発生した場合、裁判所の開示命令を経て身元確認が可能になる方法は確立するべきでしょう。それはリスクとは言わず、ごく普通の防犯措置です。なお関連して、Youtubeが大手ネットカフェのIPアドレスを弾いていないことも今回知って驚きました。2ちゃんねるの運営情報を見ていると、防犯の観点からそんなものは弾いて当然という感覚だったのですが。このようにしても、違法な投稿をしないかぎり、裁判所の開示命令も出ないので、匿名性は担保できるわけです(あくまで、日本国内の事情を前提にした考え方ですが)。
 しかし三木氏は、《情報流出には一定のバリアーも、かなりのリスクもあるという状況を作り出す必要がある》と主張しています。リスクの考え方がおかしいのはここまで述べたとおりで、不安定なリスクを保つために不必要なバリアを設けることはまったく無意味で、人々がネットにアクセスし情報を得る権利を侵害する考え方です。この「正論」はそもそも、前フリでテロ対策情報流出事件とWikiLeaks事件を挙げておきながら、実際には尖閣ビデオ流出事件以外を具体的に考えていないようです。要するに読んでも一文の価値もない、自らの思いこみだけで綴った代物で、見出しの意味不明さに釣られなければわたしもこんな批評に時間を取られたりはしませんでした。まったくもって罪深い話だと思います。