黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経抄のわがまま観。

産経抄】11月28日- イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/468331/

 広州アジア大会で、中国に有利な種目が採用され大量のメダル獲得となったことがお気に召さないようです。五輪競技に柔道が採用されたのは東京五輪から、テコンドーはソウル五輪からでした。柔道では、無差別級でアントン・ヘーシンク氏に金メダルを奪われたことが、柔道関係者や当時の観衆にはかなりショックだったようですが、そのぐらい「地元で有利な種目だから勝って当たり前」と思っていたのです。種目の選定なんてそういうものです。開催国が強いのも普通の話で、たとえばサッカーの特に国際マッチでは、勝ち点や得失点差が同じときはアウェイのゴールが高く評価され順位が決定されます。ホームはそのぐらい有利なのです。
 中華思想というのは、「最高の文明を中華と呼ぶ」というだけの思想です。そこに「その担い手は漢民族である」という考え方が入り込んでいる場合が多いのも確かですが。また実際、「この文明は“天下”=全世界で最高」と名乗って三千年間問題がなかったのです(この“天下”は、今では「東アジア」という地域名になっていますが)*1。極端な自国中心主義、一つの近代国家は他の近代国家と並列であるという認識に欠けることはいただけませんが、文明の継承者であるという自負は問題ないし、必要なことでもあるしょう。
 ノーベル賞授賞式への欠席を呼びかけたことは、劉暁波氏への評価を含めて問題はあると思いますが、中国当局の立場からして、ものすごく無茶苦茶だとは正直思いません。たとえば金正日氏がノーベル賞を受賞することになったら(一度は金大中氏との共同受賞が発表され、それを辞退しているので、まったくありえない仮定ではありません)、日本政府は、あるいは梳くなとも産経と“巣食う会”あたりはノーベル賞そのものに猛反発し、大使に欠席を呼びかけるのではないですか。それを仮にも近代国家たる中国政府がやってしまうのが問題なのですが。
 さらにこれだけではいい足りないらしく、仙谷官房長官まで批判しています。どうやら問責決議にも言及したかったためのようですが、《とことん中国に「心酔」しているのだろうか》という認識とか、いったいどこから出てくるのでしょうか。曲解というより妄想に近い発想ですね。

*1:ただ、中華文明の正当なルーツは黄河流域とされていますが、最近の考古学的研究では、米作や養蚕や鉄器の使用はもちろん、文字までが南方の長江流域文明に由来するのではないか、と考えられています。念のため。