黙然日記(廃墟)

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産経抄の思いこみ観。他。

産経抄】11月20日 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/465310/

 奈良文化財研究所の誤発見から、最初にストーリーを描いてから、「こうに違いない」という思いこみに基づいてものごとを調べることの危険性を説いています。テーマとしては正しいところです。しかし、ここ数ヶ月でも冤罪事件や歪曲報道を疑われた事件*1の例はいくらでもあるのに、なぜわざわざ1982年の教科書検定報道を持ち出すのか、わけがわかりません。思いこみによる誤報の典型例というわけでもなく、これが「思いこみによる誤報だ」という解釈自体、初めて聞いたような気がします。
 「夏の甲子園大会はサヨク朝日新聞主催だから軍服を連想させる学ラン応援は禁止されるに『違いない』」「イラク人質の3人はサヨクだから自作自演に『違いない』、ビデオでも日本赤軍あたりが日本語で指示しているに『違いない』」、「仙谷官房長官は元サヨクで今でもサヨクに『違いない』から、学術用語ではなくサヨク用語として使ったに『違いない』」。
 なるほど、思いこみというのは恐ろしいものです。報道機関は常に心すべしですね。《間違いは避けねばならないが、これを正すことはもっと大切である》。いい言葉です。学ラン誤報の検証記事は、いつになったら読めるのでしょうか。

民主党の統治能力 国民の我慢も限界にきた - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/465288/

 20日付「主張」。ねじれ国会でもあり、菅政権がいろいろと行き詰まっているのは確かです。もともと政権運営というのはあらゆる面での「矛盾の克服」であり、たとえば社会保障の確立と景気回復と財政再建と公平性の確保から、直接税と間接税の連立二元方程式の解は増税か減税か、行政組織のうまく機能している部分と問題のある部分をどう切り分けて改革するのか……。あらゆる矛盾とのつきあい方が、《統治能力》という言葉で表現されるものでしょう。
 で、この「主張」がそういう話をするのかと思ったら、まったく違いました。単に国会対策、法相の失言問題で問責決議案にどう対応するのか、対応がその場しのぎだ、という批判だけに終始しているのです。もちろん、産経「主張」にそんなに多くのことは最初から求めていませんが、ここまで視点が低いとは思いませんでした。予算案成立と問責決議案や不信任決議案にどうバランスを取るか、というレベルの話なら、過去の政権もたいていその場しのぎで対応してきたことです。国会運営の山場としてお好きな方にはたまらない状況ですが、国全体の統治能力とはほとんど関係ありません。

*1:たとえば朝日新聞ならペプチドワクチン報道の件など。