黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経抄、著作権侵害を容認する。他。

産経抄】11月12日 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/462255/

 ビデオ流出が守秘義務違反なのか違和感を覚える、すでに国会議員に公開され、議員たちが感想を述べているではないか。昨日たまたま見たフジテレビの番組でも同じような指摘をしていましたが、この論理の方がわたしは違和感があります。衆議院予算委員会は証拠品として映像を提出させたのであり、具体的にはそのメンバーである議員が映像を見て、確かに衝突している、どう見てもあちらからだ、ということを確認しただけの話です。衝突の事実そのものやそれが中国漁船側からのものであることもとっくに発表されているので、現在守られるべき機密とは、映像そのものではないのでしょうか。
 今日の「産経抄」が、議員たちの感想を、試写会を見た著名人らの感想(を使った宣伝)にたとえているのを読んで、なおさら疑念は深くなりました。映画で言えば、見た人の感想が公表されるのと、作品の映像そのものが流出した、という違いになるではありませんか。それは間違いなく違法行為でしょう*1。「映像を見たがっている人が多いからルール違反かもしれないが見せました」では、ネット上では“神”とあがめられても、社会的には通用しません。

海保長官更迭論 「責任逃れ」が政治主導か - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/462257/

 やはりこの話題中心になりますが、12日付「主張」。そもそもわたしは、海上保安庁長官の更迭論になっていること自体がおかしいような気がしています。流出実行者が海保職員ならそれは大きな問題ですし、トップを含めた監督責任は免れないでしょうが、いまのところ個人的な行為であって、組織的に問題があったという結論にはなっていません(映像ファイルの管理などで問題がなかったかは、これからの検証によるでしょう)。こうした場合、「責任を取る」ことはあっても、それがそのまま更迭や辞職という話にはならないのが普通ではないでしょうか。たとえば警察官とか、大銀行の行員が、立場を利用して個人的に破廉恥事件や横領事件を起こすことはよくありますが、そのたびにいちいち警察庁長官や頭取が辞任しているでしょうか。トップが「責任を取る」としてもこういう場合は、減給十分の一とか戒告とか、そういう処分だってあるわけです。
 産経「主張」は、産経に限りませんが、たまたま所管官庁である国土交通省の大臣を辞任に追い込み、ひいては内閣の責任を問う政局に持ち込みたいのでしょうが、そのために前提として更迭されるのでは、海上保安庁長官もたまったものではないでしょう。もちろん、その内閣の責任逃れとして尻尾切りで更迭されるのも、たまらないでしょうが。
 民主党政権は、その方針として「政治主導」を強調しています。実際にはうまくいっていないように見えますがいちおう建前上通用しているものとして、それは公務員の行為に対して政治家が責任を負うというものなのでしょうか。政治家が主導して公務員は手脚となって動き、その結果はすべて政治家が引き受ける、というのが「政治主導」であるはずです。政治判断と無関係に公務員が勝手に判断して行ったこと(この流出事件を「公務員の行為」と考えるのも間違っている気がしますが)、それどころかむしろ、「非公開」という政治の指示に逆らって行われたことまで、政治家が責任を取るべきなのでしょうか。それもひとつの考え方ではあるかもしれませんが、少なくとも、「政治主導」とは関係ない話ではありませんか。

*1:映画の例と同じく、映像無断公開には著作権法違反の疑いもあり得ます。さすがにそれで政府が流出者を訴えるということはないでしょうが。