黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経抄、見えないものを見る。

産経抄】11月6日 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/459922/

尖閣ビデオ流出 政府の対中弱腰が元凶だ - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/459923/

 尖閣諸島沖で中国漁船と海上保安庁巡視船が衝突した場面を撮影したものと見られるビデオ映像がインターネット上に流出した事件(ここまで一語)ですが、「産経抄」はひたすら、最初から公開しなかった政府が悪い、です。これはもうそのとおりなので、特に個人の名誉に関わるものやグロテスクな映像が含まれているというわけでもないのなら*1、情報というものは基本的に、公開し共有されるべきものなのです。
 ところでこの映像には、海上保安庁が担当する国境警備に関する重要な情報が含まれている可能性があります。素人目にはわからなくても、専門家がじっくり分析すれば多くの情報を得られる映像という例はたくさんあります。実際に含まれているかどうかではなく、「含まれている可能性がある」だけでも、公開を求めることは「国益を損なう」ことになりかねません。海上自衛隊に対してその手の映像情報を公開するように求めたら、産経は猛反発すると思いますが、海上保安庁ならいいのかな。日本の沿岸警備を担当しているのは海自ではなく海保なのですが。
 ビデオ流出の犯人探しは、「産経抄」が揶揄するほど軽いことではなく、国防に関する重要な問題です(ということになるはずです)。いかなる理由にせよ、絶対公開禁止と決められた機密情報があっさり流出してしまうのは、危機管理上の重大問題であるはずですが、これについても「産経抄」は口を閉ざしています。また「主張」も、情報管理より非公開とした政府の責任をより厳しく問う内容になっていますが、産経の基準ではこれはそれほど軽視できる問題なのでしょうか。
 もっとも個人的には、かつて有名人や政治家の年金未納問題が注目されたときの、社会保険庁職員によるデータ覗き見事件と同じく、「話題になっているのに見るなと言われているもの」はどんどん流出してしまうケースではないかと思っています。海保や検察の担当職員はことの重大性を理解しているとしても、「ここだけだぞ」と言われながらコピーされた映像が何世代目かになれば、「ネットに公開すれば“神”になれる」という発想の持ち主が一人や二人は紛れ込んでくるでしょう。巷間囁かれている、検察による民主党政府への意趣返しとか、義憤に駆られた“愛国者”がいたのだとか、そこまで深読みしなくてもよさそうに思います。(何度も言っているように、わたしのこうした予測はたいてい外れますが)。
 「産経抄」が《編集した無難なシーンを国会関係者だけに見せて、お茶を濁そうとした》と書いているのですが、わたしが(iza!の産経記事で)読んだ話と、だいぶ違う現実を抄子は見ているようですね。国会に提出され議員らに上映された6分半のビデオは、2回の衝突場面を中心に編集されたものだったはずで、「無難」とか「お茶を濁す」という表現がどこから出てくるのかわかりません。それとも、今回流れた40分ほどの映像には、なにかもっとやばいものでも映っていたんですか? オレンジ色の光球とか。

*1:実はわたしはまだ観ていません。最初に上がったものは削除された、と聞いた時点で探すのが面倒になりました。あちこち転載されているようなので、消え去ることはないでしょうが。