産経、ホメオパシーを持ち上げる。他。
溜め込んでいた一般記事をさらっていたら、「また産経か」のオンパレードでした。
朝鮮学校無償化 賛成派が東京で集会 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/crime/444446/
26日付の短い記事なのですが、いきなり《北朝鮮影響下の思想教育が行われる朝鮮学校への高校授業料無償化適用が検討されている問題で》と始まります。もちろん全文この調子で、そのテンションの高さに笑ってしまいました。
【News解説】「効果なし」に「治療症例多数」と反発 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/crime/438045/
ホメオパシーは有効? 「副作用もないが治療効果もない」VS「科学的に有効性が証明」 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/living/health/444453/
上は9月9日付SANKEI EXPRESS【News解説】欄、下は26日付産経新聞本紙【日本の議論】欄です。
よく言われることですが、「あいつはバカだがいい奴だ」と「あいつはいい奴だがバカだ」では、同じことのはずなのに、聞き手に与える印象が真逆になります。特に下の見出しは、否定派の意見にわざわざ《副作用もないが》をつけているあたり、印象操作としては悪質でしょう。ホメオパシーに対する賛否両論を併記して中立を保っているかのように装っていますが、もはや現在の状況では、賛成論を載せるだけでホメオパシーに荷担していると思われてもしかたないところです。
ところで、新薬の認可には二重盲検法が必須とされています。実際の患者を二群に分けて、その新薬候補とそれこそ砂糖玉をそれぞれ「これは画期的な新薬です」と言いながら投与して、両方の治癒効果を調べるものです(「二重」というのは、投与する医師にもそれが本物か砂糖玉か教えないからです)。この検査を経て治癒した患者が、新薬候補では5割、砂糖玉では1割だったとしたら、その新薬は効果があると判定されます。ここで逆に言えば、砂糖玉でも一定数の患者は治ってしまう(プラセボ効果)のです*1。SANKEI EXPRESSがいかにも“科学的根拠”であるかのように見出しに掲げている《治療症例多数》がどういう意味であるか、少し知識があれば簡単にわかる話なのですが。また、下の記事の《科学的に有効性が証明》も、具体的になんのことやらわかりません。「論文が出ている」というのは、似非科学によくある“権威付け”ですが、他の研究者によって追認されていなければなんの意味もありません。
産経と似非科学の相性の良さは、例のID論インタビュー以来、しばしば指摘されてきました。日本では数年前まで、ホメオパシーという考え方そのものがあまり広まっていませんでした。しかしここ数ヶ月の、ホメオパシー(への信奉による近代医学の拒否)による死亡事例が相次いだこと、日本学術会議が、つまり日本の科学界全体が、ついにホメオパシー否定に踏み切ったことで、似非科学・代替医療の代表格であるホメオパシーが、過去になく注目されています。そんな中、産経がどんな反応を示すのか――単純なニュースではなくオピニオンや解説記事としてどんな姿勢を示すのが注目されていたわけですが、ここまで予想どおりとは。
【エディターズEye】新聞の常識は世間の非常識 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/business/media/444761/
27日付SANKEI EXPRESSの、櫛田寿宏記者によるコラム。内容は非常にまっとうで、産経本紙の【From Editors】とは比べものになりません。わたしの文章感覚でも、句点と鍵括弧が続くことはあり得ないのですが、へえ、川端康成もそう書いているのか、などと感心させられました。
で、なにが言いたくてこの記事を引用したのかといえばもちろん、「産経新聞の常識は世間の非常識」だよね、というだけのことです。本紙編集幹部の面々が、ほんの少しでも櫛田記者と同じような自問をしているなら、そんなことにはならないはずなんですけどね。