産経抄、またもやの自己矛盾。他。
【産経抄】9月24日 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/443444/
《永井荷風の日記は全くの創作だという》。……いや、あんたねえ。つい3ヶ月前の6月28日付で*1、荷風の日記を得々として引用してたじゃないですか。
本題は児童虐待問題です。ほんとうに何度も、何度でも繰り返して言いますが、産経オピニオン欄に虐待問題を論じる資格はありません。「しつけ」「体罰」の美名を口実にした耐え難い虐待事件がまたひとつ明るみに出たことを、そして特にこの事件の陰惨さは、虐待者が子供に“日記”(と称する“反省文”のたぐい)を書かせ、それを検閲していたという事実であることを、わかっているのてしょうか。この“日記”に、子供が文字通り命懸けの思いでつけた小さな印が虐待者逮捕の決め手になったわけですが、そうしたきっかけもなしに続けられている「しつけ」が、今現在もいったいどれだけあるのかと思うと、慄然とせざるを得ません。
便利な言葉で正当化 「しつけのため」口そろえる虐待親たち - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/crime/442228/
児童虐待問題を扱う連載企画の新シリーズ【なぜ親は一線を越えるのか】の第1回で、20日に掲載されたものです。この企画については後日まとめて取り上げるかもしれませんが、社会面でいくら良い企画記事があっても、オピニオン欄がいつもの産経では台無しだ、ということを強調しておいます。この連載が始まる直前、18日付「土曜日に書く」の見出しは《「虐待」が頻発する背景》、その背景を《溶融する「部分社会」》に求めるものでした。
中国人船長を処分保留で釈放 「今後の日中関係を配慮した」と那覇地検 尖閣衝突事件 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/crime/443656/
今日はやはりこのニュースということになります。この記事が産経iza!では第一報なのですが、なぜかいきなり、《〔略〕釈放することを決めたことについて、〔中略〕と説明》と書かれています。「釈放へ」という事実関係はすでに報道済という前提の記事ですね*2。実際に釈放されるのはこれからなのに、見出しのこの表現では今日釈放されたかのようです。【中国人船長釈放】の形で、タグとして扱うならわかるのですが。なんで大ニュースになるとしょっちゅうこの手の混乱を起こして、いやそれは各社サイトとも同じようなものではありますが、混乱の形跡をいつまでも残ったままにしておくんでしょうか。
記事と直接関係ない話。この釈放決定を、昨日から今日午前中に判明した建設会社社員が中国で拘束されたと見られる事件と結びつける考え方が多く、あちこちでいろいろと吹き上がっていますが、タイミングを言うなら、日米首脳会談の直後であることも見逃せません。最近の動きを中国側から見ると、対日姿勢は「なぜ?」と思うぐらい強硬な一方、米国に対しては接近姿勢を示していました。その前提に、日米関係が現在、戦後を通しての水準と比較すれば、あまりうまくいっていないという事実があります。いささか皮肉に言えば、「日米中正三角形」論を、日米・日中の二辺を伸ばすことで実現しようということでしょうか。しかしこれは、米国にとってはあまり得策ではありません。日本は米国にとってまだ利用価値が大きく、これ以上距離が伸びることは望まないのでしょう(この点、日本は外交カードを1枚多く持っていることを自覚すべきです)。あるいは少なくとも、現在の中国の戦略にそのまま乗っかることはできない、ということかもしれません。
「人質を取られてあっさり釈放した」という見方が絶対に間違っているとは言いませんし、矛盾するわけでもないのですが、「米国がなんらかの仲介をした」とわたしは見ています。
*1: d:id:pr3:20100629:1277737318 参照。
*2: MSN産経ニュースでは http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/100924/crm1009241445019-n1.htm が第一報で、こちらはいちおう辻褄が合います。