産経抄の金銭感覚。他。
【産経抄】９月１２日 - イザ！
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/439229/
「♪お金は世のため人のため ちょきちょき貯金の」とあの笹川良一氏も唱えていた金曜日の10日に、日本振興銀行の破綻と1000万円以上分のペイオフ実施が発表されました。なにやらそういう話をしたいらしいのですが、それがなんの説教になっているのか、頓珍漢すぎて落語というより判じ物のようです。
落語『千両蜜柑』のテーマを《大金持ちと庶民との金銭感覚のズレ》と解釈するのはよいと思いますが、なぜこれがペイオフと結びつくのか、そこがわかりません。3560人分の預金約100億円がカットされる*1、1人平均ざっと300万円です。保護される分を含めて平均約1300万円を預金していたことになりますが、抄子*2がいくら落語の番頭並みのつつましい金銭感覚だと主張しても、驚くほどの大金だとは思えません。千両という金額は、時代や換算方法にもよりますが、現在の価値でおよそ3000万円から1億円といったあたりになります。もちろん、蜜柑1個の実際の取引額ではなく、落語の中で「想像を絶する大金」という意味で持ち出された金額です。約1300万円という預金額は、こうした異常な金銭感覚を引き合いに出すほどのものなのでしょうか。もっとも、平均値だけでこう言うのは、いささか公平を欠くかもしれません。3000人以上のペイオフ対象預金者の中には、3000万円や1億円を預金していた人もいるのでしょう。でもそれにしたって、虎の子の預金でしょう。息子のわがままのためにぽんと出せるお金とは思えません（そういう人が絶対に含まれていない、とは言いませんが）。ペイオフ保護枠以上を預金していた人も、別に木村剛会長の信者としてドブに捨てるつもりで預けていたわけではないでしょう。過去の例から、ペイオフ実施はないだろうと考えていた人が大半だろうと思います。その点を指摘した上で、「甘っま〜い！」とロイヤルワンダー学園教頭のような説教をするなら、まだわかります。しかし「お金を大切に（一日一善！）」と笹川氏のような説教をされても、なんというか、あまりに的はずれだとしか言えません。
いくら産業経済新聞社が業界一、二を争う安月給で知られるとはいえ（これは社員の話で、役員は別かもしれません）、いちおうは大企業に分類される会社の部長から役員クラスにあたる論説委員が、1300万円という金額を把握できないほど貧しいとは思えません。ふだんから貧乏を装っているうちに本当に金銭感覚を喪失してしまったのか、さもなければ、「3500人で100億円」という総額から1人あたりの平均値を計算できないほどアレなのか、どちらにしても情けない話です。いや仮に、金額の話はおくとしてもいいでしょう。「産経抄」は6月28日にも、永井荷風の全財産と親会社会長の年収を比較して弁護していました*3。「千両」の換算値はともかく、個人預金というストックと、蜜柑の代金というフローの区別が付かないところは、まるで改まっていないようです。産業とも経済とも縁のない新聞ではありますが、ふつうの社会人の金銭感覚、金銭に関する認識としても、あまりにおかしくありませんか。
代表選の欠陥 外国人関与なぜ放置する - イザ！ 〔9月7日〕
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/437055/
代表選と検察審 許されぬ審査員への恫喝 - イザ！ 〔9月8日〕
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/437512/
代表選と成長戦略 欠けている企業活性化策 - イザ！ 〔9月9日〕
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/437982/
小沢氏の国家観は危うい 民主党代表選 - イザ！ 〔9月10日〕
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/438423/
代表選１４日投票 国家の危機考えた選択を - イザ！ 〔9月12日〕
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/439224/
というわけで注目していたのですが、産経新聞「主張」欄が「代表選」を見出しに掲げる連続記録が、11日付で途切れてしまいました。8月31日から11日間の記録でしたが、12日になってまた復活しております（笑）。あとは「代表選明日投票」「代表選今日投票」「代表選これでいいのか」「代表選いやよくない」「代表選ミンスガー」……といくらでも記録を伸ばせそうなわけですが、いやさすがに新代表が（どちらにせよ）決まったら、見出しは「民主党新代表」になるか（笑）。
7日分についてはすでに取り上げましたが、他もあいかわらずひどいもんです。検察審査会の結論そのものが出ていないのに小沢氏を犯罪者と決めつける（8日付）、《男系の男性にはこだわっていない》という発言を女系天皇容認と決めつけたり（10日付）。どっちみち、皇位継承については事実上解決した問題ですし、そもそも「象徴天皇制の見直し」などに言及しないかぎり、《国家観》の問題ではありません。靖国神社のA級戦犯分祀論についてはなおさらで、これを「国家間の問題」と捉える側の国家観が問われるところです。
