黙然日記(廃墟)

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産経抄の細胞の数。

産経抄】9月4日 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/436054/

 まず。小沢一郎氏の《米国人は好きだが、いささか単細胞》という発言は、とりあえずあまり大きくは扱われていないようで幸いでしたが、場合によってはかなり問題になりかねない失言だったのではないかと思います。英語にはこういう表現はないようで、和英辞典では《simple-minded》となっています。しかしフィナンシャル・タイムズの社説では《single-celled organisms》と直訳されていました。日本語でも本来は、「思考能力がゾウリムシなみ」というかなり厳しい罵倒表現だったのでしょう。それを「単細胞」と言うと直感的にはわかりにくいためか、いつしか普通の悪口に、あるいは悪口とすら意識されない表現になってしまいましたが、なんの註釈もなく直訳されると、かなり印象が異なります。実際、「彼らは単細胞だ」という発言を、ほとんどの日本のメディアは「彼らは思考が単純だ」という以上の意味では受け止めていないのに(それでも問題なのですが)、FT紙は原義に戻って解釈しているわけです。
 「産経抄」については、小沢氏の基地移設問題への発言を取り上げて、党内左派の票を固めるためだと解釈しています。そもそも旧社会党系を党内基盤としてきた小沢氏が、いまさらそんなことをする必要があるのか、疑問があります。また、今回は触れられていませんが、小沢氏の経済政策、産経のいわゆる「バラマキ」政策についても、「国民の歓心を買うため」という評価で一貫しています。しかしいずれも、因果関係が逆ではないでしょうか。普天間基地移設問題で鳩山由紀夫前首相が5月末に名護市移転案で決着を表明し、6月に入ってすぐ首相辞任を表明したとき、直後の内閣支持率は急落しました。しかしこのときの調査結果をよく見ると、辞任そのものよりも、「県外移設」の公約を果たせなかったことへの批判、失望が多くを占めていたことがわかるはずです。また「バラマキ」公約にも、生活が苦しい人を中心に期待が高いことは言うまでもありません。こうした国民の意思を受けて、それを実現したい、と小沢氏は言っているわけです。
 今回代表選で、産経は菅直人氏支持、というより反小沢氏の姿勢を強く打ち出しているようです。《菅直人氏、ロッキード事件への憤りが原点 》*1なんていう提灯記事まで出しているので驚きましたが、菅氏の政策だとなにかと都合がいいということもあるのでしょう。逆に言うと、小沢氏が首相になると、産経にとってはたいへん都合が悪い、ということでもあります。財政に関する景気回復重視か財政規律優先かという違いなどもあるのでしょうが、今日の「産経抄」で父親のことまで持ち出して攻撃しているぐらい、小沢氏の安保問題への姿勢、あえて言えば反米的姿勢への懸念が強いのではないでしょうか。今回の「単細胞」発言で逆上しているのも、米国への侮辱を許せないからだと考えればよくわかります。あいかわらずの従米ちゃんぶりというか、「産経は(笑えるので)好きだが、いささか単細胞」と評価せざるを得ません。
 ところでまったく関係ない話ですが、犬は飼い主に似てくるとよく言われますね。いや、関係ない話です。*2

*1: http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/435131/

*2:今回えらく小沢氏を持ち上げる形になってしまいましたが、政策面では上記のように小沢氏の方がマシだと思い、また「小沢首相になれば産経が吠え面を掻く」という点を考慮しても、まだ小沢氏は支持できません。ていうかどっちもダメくさいけど、というのが本音ですが。