黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経抄、現実から目を逸らす。

産経抄】9月5日 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/436400/

 《変質したとは考えたくないからである》と結ぶ今日の「産経抄には、こう言うしかありません。
 現実を見なさい
 保守主義を掲げる産経が、明治あるいは戦後の経済興隆期を理想として考えるのは理解できますし、おそらくそれは正しい保守主義でしょう。しかし、それが理想社会でありすべてにおいて欠点がなかったかのように考えるのは、歴史修正主義の始まりです。たとえば抄子は、職人の言葉を引用して、手先の技芸を覚えるのは12歳から15歳までが最適だとしています。戦前は小学校卒業で徒弟入りできましたから、その最適期に学べたのでしょうが、戦後教育ではこの期間も義務教育とされました。中学卒業後では遅いということになります。一方でこの時期は知識の理解吸収に最適でもあり、英語や日本史、学問の基礎といった一般常識を学んでほしい時期でもあります。
 囲碁や将棋の世界では大卒のタイトル獲得者がいなかったというのは意外でしたが、挙げられている相撲の世界では、大学出身力士が幅をきかせています。いや、いました。そもそも棋界は技芸の世界ではなく、頭脳スポーツです。徒弟制度がいままでは有効ではあったにせよ、定跡研究にコンピュータが利用されるようになって、本人の努力が大きな割合を占める時代になり、棋界も変わりつつあります。新碁聖の誕生はそうした時代の象徴とも言えます。
 若い、というより幼いころから一つの世界だけにのめり込ませる徒弟制度は、その技芸などの習得には役立つでしょうが、場合によっては世間的な常識を身につける機会を奪うことにもなりかねません。それは、また引き合いに出しますが、相撲の世界に顕著に表れています。あるいはいくつかのスポーツの日本協会クラスについても、あれほどひどくはないとしても、同じような問題を孕んでいるように見えます。大学に通えば常識が身に付くものではないというのも、これまた相撲の世界に顕れていますが。
 繰り返しますが、正しい保守主義とは、変化を受け入れないことではありません。現実の問題点を常に冷徹に見つめつつ、主に過去の成功例から解決策を見いだして、その方向に改めていく、改められるように努力することです。問題点が発見できないのに過去の事例をなんでも持ち出すことではありません。