黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経「正論、自分が困る。他。

 えー、最初から脱力ネタです。

あの名曲…応援歌「ハイサイおじさん」が教育的指導で消された 甲子園・夏 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/sports/other/429432/

 産経・甲子園・夏・応援スタイルとくればアレですよね。学ラン応援虚報事件は、もう3年前のことになります*1
 今日は沖縄代表の試合があったためか(勝ったらしいですね、よくわからんけどおめでとう)、この話題は琉球新報の記事になり、毎日jpにも転載されています(沖縄タイムスのサイトにはそれらしい記事はないようです)。この琉球新報の記事では、『ハイサイおじさん]が使われなくなった理由を「応援用の新曲(『ヒヤミカチ節』をアレンジしたもの)ができたため」とのみしています。一方産経の記事では、地元紙に掲載された投書を受け*2、“教育的”でないとして採用を見合わせた、という筋書きになっています。
 地元紙報道と産経の報道が食い違い、しかも「抗議の投書を受け、教育的配慮で応援スタイルを変更」となるとますます学ラン応援虚報事件に似てくるわけで、ここんところにツッコもうと思っていたのですが*3。しかし毎日新聞の別記事でも、新聞投書の指摘に配慮した、という話になっており、これはおそらくそういうことなのでしょう。
 というわけで、危うく自分が虚報してしまうところだったのですが、ところで産経新聞さん。3年前の虚報事件についての検証記事はまだなんでしょうか? ずっと待ってるんですけど。
(22日追記)
 『ハイサイおじさん』については、カマヤンさんエントリでこの歌が誕生したいきさつについて引用紹介されていました。

[メモ]「ハイサイおじさん」とヤスクニの分祀 - カルトvsオタクのハルマゲドン/カマヤンの虚業日記
http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20100820#1282310558

 

朝鮮学校無償化 識者ら「実質的な経済支援」 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/education/428809/

 16日付の一般記事で、見出しから主張内容がすべて想像できるのですが、あまりに笑えるのでネタにしておきます。「安全保障や外交、拉致などの問題にたずさわる識者」は、以下のお三方です。

  • 潮匡人氏(国家基本問題研究所)
    • 「安全保障」の識者。潮氏については当ブログでもしばしばネタにさせていただいているので、特にコメントはしません。
  • 萩原遼氏(共産党機関紙「赤旗」の元平壌特派員)
    • 消去法で考えると、「外交」の識者になるのでしょうか。北朝鮮問題専門のフリージャーナリストが、外交問題全般に見識があるように書くのもおかしな話です。また、萩原氏が平壌駐在だったのは1972年から73年まで、40年近く前のごく短期間です(北朝鮮から国外追放処分を受けたというのはジャーナリストとして名誉ではありますが)。それにしても、当ブログでは20年以上前の肩書きをいまだに振りかざす佐々淳行氏を毎度おちょくっていますが、もっとすごい人がいたんだなあ。「元共産党」の肩書きでミスリードしていますが、反北朝鮮の点から愛国保守略して(ryの皆さんに接近し、今では月刊誌「正論」にも顔を出すようになってしまたった方です*4
  • 西岡力氏(東京基督教大学教授)
    • こちらはよくあるパターンの肩書きロンダリングですが、「拉致などの問題」の識者であるはずなのに、なんで素直に「救う会副会長」と書かないのでしょうか。

 記事全体が、「高校無償化=北朝鮮への経済支援」という前提になっていますが、この人たちおよび記事をまとめた産経の記者は、お金のやりとりの仕組みとかがわかっていないのでしょうか。いままで保護者が納めていた高校の授業料(の一部)を国が払うようになっても、朝鮮学校の収入は一銭も変わりません。経済的利益を受けるのは保護者だけです。あるいはここで、北教組問題などで産経が振り回しているトンデモ理論、「原資が税金だからどこまで行っても税金を使ったことになる」という理論が出てくるのでしょうか。各氏のコメント内容にも「税金」という言葉が出てくるので、この辺の人たちは揃ってこの理論を受け入れているのかもしれません。

史実書きかえは韓国の方が困る - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/428493/

 16日付、古田博司氏による「正論」です。なんでこの人が朝鮮史の専門家扱いされ日韓歴史共同研究委員会教科書小グループのリーダーまで任されているのか、古田氏の文章を読むたびに、頭の中が「?」マークでいっぱいになります。
 たとえば今回も、17世紀から18世紀にかけて、李朝から明へ送られた書に「朝鮮国王」の署名がなかったことを理由に「朝鮮王朝などという王朝はなかった」と、堂々と歴史を捏造していますが、なんのつもりなんでしょう。15世紀に太宗が朝鮮国王として冊封を受けているのですから、この時点で朝鮮国王は確実に存在し、世襲されていき王朝と呼べる存在になっていました。仮に、17世紀以後の一時期に、清朝に対してそう名乗らなかったことをもって、朝鮮国王が存在しなかった時期があったと定義しても、それまでの二百数十年間には(李氏)朝鮮王朝が存在したのです。属国であったとか臣下であったことを理由に「王朝」が存在しなかったと論じるなら、これはあまりに封建制度を理解していない言い方で、皇帝という位が登場した後(始皇帝即位以後ですね)は、国王はすべて皇帝の臣下です。中世史に携わる人が、なんでこんな勘違い、または捏造をするのか、まったく理解不能です。いやまあ、産経「正論」欄が歴史を捏造する理由はわかるのですが、なんでこんな素人に指摘されるような捏造をするのか、です。普通にこの文章を読んだって、李氏朝鮮が五百年続いたという中学校で習う知識があれば、なんでそのうちの4人の国王の書だけをわざわざ取り出してすべてを否定するのか? という疑問が沸くはずなのですが、これで誰かを騙せるとでも思っているのでしょうか(騙される奴はいそうですけどね……)。
 また、2001年に英国の学者が述べたという「強制されたから不法という議論は第一次世界大戦以降のもので、当時としては問題になるものではない」なる指摘も、日本政府や菅談話はこの立場(少なくとも限りなく近い立場)にあるわけで、わざわざ持ち出してくる意味がわかりません。「強制された」ことが問題なのであり、強制があったことは誰もが認めている(さすがの古田氏ですら否定できない)事実なのです。
 さらに、日韓併合条約無効論を採ると、植民地時代に相当する一定時期に韓国には主権者が存在しなかったことになり、これが「韓国の方が困る」との論拠なのですが、別に困りゃしないでしょう。「不法に占拠されて抵抗できなかった」のです。(無効論に立った場合)主権は消滅したのではなく、強制的に剥奪されたのです。これも普通に考えればわかることで、なにがいったい「困る」というのでしょうか。
 これでまだ半分ぐらいなんですが、さすがにもう確認作業とかが面倒になってきたのでこのへんで。とにかく古田氏には、「歴史の捏造は自分が困る」という認識をしっかり持っていただきたいものです。

日本がハングルを学校で教えた  - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/429286/

 18日付「正論」もまとめて片づけておきます。今度は藤岡信勝氏が、「いいこともした」論を展開しているわけですが、まったくもう。
 下関条約を根拠に、日清戦争の目的は朝鮮国の独立だったとしていますが、まあそれはそうかもしれません。清の藩属国のままでは、うかつに手を突っ込んで利権を確保したり妃を暗殺したり、特に併合条約を押しつけたりはできませんから。朝鮮が独立し大韓帝国が成立してから日露戦争(これも朝鮮・満洲の利権を求める戦争でした)を経てわずか13年後に日韓併合が行われたことを考えれば、その意図は明白です。「隣に独立国がほしかった」という藤岡氏の論は、いったいなにが根拠なのでしょう。征韓論が「時期尚早」として退けられてから半世紀後に日韓併合がされたわけですが、その間の数年だけ、大日本帝国はそんなに善隣主義のお花畑国家だったのでしょうか。13年間なにも準備せずに、いきなり併合のアイデアが出てきたとでもいうのでしょうか。教育の普及にしても、すでに国内となった土地で教育を進めるのは、別に善隣主義でもなんでもありません。自国の利益のためでしょう。
 日本の植民地支配が西洋型とは異なっていたのは確かでしょうが、それをあたかも善意からであるかのように言いつのるのは、歴史修正主義の典型ではないでしょうか。

*1: d:id:pr3:20070831:1188528795 参照。いまだにブクマが増えたりしていて、ありがたいことです。

*2:沖縄の地元紙は琉球新報沖縄タイムスの2紙があり、どちらへの投書かは不明ですが、勝手に憶測するなら琉球新報なのでしょう。それなら、同紙記事がこの話題を取り上げながら投書の影響に触れていない理由もわかります。ただしこれは、あくまで憶測です。

*3:そして前エントリコメント欄でこのネタを提供くださったあぐりこらさんにも、自信満々のコメントをつけてしまったりしたのですが。恥ずかしい。

*4:『正論』の広告の入り方を解析する(2) - ライプツィヒの夏 http://blog.goo.ne.jp/mccreary/e/ecc372f245fe463ea132d542e1276bee 参照。4月以来感想を書きそびれていましたが、Bill McCreryさんが労力を注がれた実に面白いエントリなのです。ぜひご一読を。