黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経「正論」、詭弁を通す。他。

朝鮮学校の無償化は違憲の疑い  - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/429753/

 19日付「正論」は、在日外国人地方参政権違憲論で学会を独走する(後に誰もついてこない)百地章日本大学教授です。今度は表題のようなことを言い出したわけですが、懲りるということを知らないのでしょうかね。
 憲法ではほとんどの基本的人権が国籍を問わず認められるというのが最高裁判決にも学説にも示されている、とした上で、「入国の自由」「参政権」「社会権」は例外であるとしています。入国の自由が認められないのは国際慣習法によるもので、これは普通に理解できます。参政権が認められない根拠は「国民固有の権利」であるからだ、といういつもの外国人参政権違憲論を持ち出すわけですが、その根拠に「本欄でも指摘してきた」しか示していません。参政権は外国人に対して無条件に与えられるわけではない、というのは最高裁判決などでも示され、現在の議論でも前提になっています。しかし、「無条件では認められない」と「絶対に認められない」は違うわけで、「認めても認めなくてもいい」という判決だったわけです。百地氏が「国民固有の権利」だから「国民(日本国籍所持者)だけに認められる」としている点についてもあらためて指摘しておくと、この言葉は「国民が本来持っている権利」という意味であって、「国民だけの権利」という意味ではありません。国語辞書などを引いても、「本来の」という語義が先で「そのものだけの(特有の)」は2番目となっています。
 高校無償化は社会権(人間らしく生きる権利)に含まれるわけですが、社会権全体は外国人には保障されないとされているようです。しかし、「保障されない」は「現在認められていないのは違法(違憲)ではない」ではあっても、「認めることができない」ことにはなりません。これは参政権の場合とまったく同じです。百地氏は、社会権のうち外国人への生活保護を例に挙げて「「権利」ではなく、一方的な行政措置」としていますが、これが違憲であるとはさすがに言えないようです(個別の生活保護認定で問題が起きたことは、もちろん別の話です)。
 長々と書いてしまいましたが、百地氏の主張はすべて、「憲法上は権利が保障されていない」という解釈を「だから権利を与えることは違憲」とする詭弁に基づいています。いくらなんでも法律の専門家であり有名大学の教授ともあろう人が、自分が詭弁を弄していることに気づいていないとは思えません。だとすればこれはたいへん不誠実な態度です。「知的であるが誠実ではない」という人間の性質を、なんと呼ぶんでしたっけ*1

藤岡信勝「教授」→「客員教授」こっそり軌道修正。訂正せず - 新しい歴史教科書をつくる会WATCH
http://d.hatena.ne.jp/tsukurukaiwatch/20100818/p1

 昨日のエントリにトラックバックをいただいた、tsukurukaiwatchさんの記事です。藤岡氏の肩書き詐称問題も重要ですが、iza!ブログで強制閉鎖という憂き目にあわれた方もいらっしゃるんですね。わたしもiza!へのトラックバックを拒絶され、iza!に別冊を作っても同じ扱いを受けるという扱いを受けているのですが、いきなり閉鎖とは。ささやかながらエールを送らせていただきます。

*1:「人間には知的・誠実・ナチス的の三つの性質があり、一人の人間が同時にすべてを持つことはでいない」という名言を踏まえていますが、これも実は詭弁ですよね(笑)。「ナチス的」という概念に「反知的」「不誠実」という二つの属性を与えているわけです。