黙然日記(廃墟)

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産経「主張が法相の真意を明らかに。他。

1年ぶりの死刑 法執行は粛々とすべきだ - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/422052/

 30日付「主張」です。28日朝に発表されたニュースですから翌日の朝刊には余裕で間に合ったはずなのですが、どういうわけか「主張」「産経抄」とも30日付となりました(もっとも、読売・毎日の社説は29日でしたが、朝日も30日になっています)。いろいろ様子をうかがっていたのではないかなあ、と思いますが、「政治的パフォーマンス」と断じる路線に決まったようです。
 死刑執行の決断がどれだけ重いものであるのか(さらにいえば、実際に執行する役目のほうが重いだろうと感じますが)、
 たいへん皮肉なことに、と言っていいと思いますが、産経「主張」が千葉氏の決断を、死刑廃止派によるパフォーマンスと断じ、その根拠になりそうな推測を並べることで、千葉氏の真意や死刑を廃止すべき理由について、次々と明確にされる結果になっています。
 「死刑の判決から執行に関わる人はすべて、執行現場に立ち会うぐらいの覚悟が必要だ」という姿勢は、死刑に原則として反対しつつ現実の法体系を維持するべきという立場から、ふつうに出る発言でしょう。これが裁判員の判断に対するプレッシャーだという非難は、おそらく正鵠を射るものでしょう。ただし、非難されるべきこととは思いません。しかし、「議論を始めるための執行だった」という指摘は、少なくとも産経がするべきことではないでしょう。「(現在の)法を守ってベルトコンベア式に執行しろ」と主張し、今日もこの見出しを掲げているのが産経なのですし、法相はその現行法に従うという決断をしただけであって、その意味ではなんら非難されるべきことはありません。ただ、それにしても、執行すべきではなかったとわたしは思いますが、立ち会いまでした決断の重さは尊重します。

産経抄】7月30日 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/422053/

 えーと。なにこれ。17年前、死刑反対派と見られていた後藤田正晴氏が法相として死刑執行を再開したときの国会答弁を引き合いに、後藤田氏は法に従った正しい判断をしたと絶賛しています。そして、今回の千葉景子法相はパフォーマンスと決めつけているわけですが*1、なにがどう違うのか、まるでわかりません。産経抄ダブスタはいつものことですが、それは「昨日言ってたことと違う」というレベルであって、同じ文章の中でほぼ同じ行動をここまで区別するのは、二重基準というよりもはや支離滅裂のたぐいだろうと思います。
 「法相が個人的な思想信条で(執行命令を)しないとなれば、初めから大臣就任が間違いだ」というのは後藤田氏の答弁ですが、千葉法相の答弁であってもまったく不思議はありません。この答弁を引用しながら千葉法相に対しては「理由は何か、理解に苦しむ」と書く理由は何か、理解に苦しみます。法秩序維持の「覚悟が感じられないから」理解できないんだとか言われても、そりゃあんたの感覚が歪んでるだけだよ、としか言えません。

有事の邦人保護は海兵隊が頼り 緊迫する朝鮮半島情勢 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/421120/

 後藤田正晴氏の名前が出たので、後藤田氏のもとで働いていたことが自慢の佐々淳行氏による28日付「正論」を、いまさらながら。これを読んだら、後藤田氏も草葉の陰で嘆くことでしょう。
 さすがの佐々氏でさえ、半島有事のどさくさにらち被害者を救出しろなどと無茶は言っていませんが、全体としてなにが言いたいのか、さっぱりわかりません。なにやら、沖縄の米海兵隊はゲームの自機キャラかハリウッド映画の主人公みたいに強いんだと信じているみたいなんですが、どうなんですかね。韓国の軍および行政組織によって在留日本人を釜山まで運び、あとは日本の船で輸送するという現行の計画は、もっとも現実的なものだとしか思えません。朝鮮戦争のときだって北から釜山まで攻め込むには何ヶ月もかかっているわけですし、現実的な計画を無視して米海兵隊が直接戦闘も在留米国人保護も無視して日本人の保護だけを優先してくれるという妄想的な前提をおく理由は、なんなんでしょうか。一方で、最後のまとめが「アジア唯一のサミット(G8)参加国日本は、邦人だけでなく国連加盟国すべての非戦闘員の命を救う名誉ある国連人道支援のホスト国を志願すべきだ」。G8と国連の区別もつかないようですし、北朝鮮もいちおう国連加盟国ですよ? こんなに現実を認識できない人が日本における危機管理の第一人者なのだとしたら情けない話です。本人が自称しているとおりの第一人者なのかは別に検証するとして。それにしても、よくこれだけ支離滅裂な文章が書けるものです。
 
 今日のエントリで3本の記事を紹介しましたが、だんだん支離滅裂度が高くなっていくのでご注意を。読み進めてやばいと思ったら、適当なところで中断してください。

*1:MSNでの記事配信時点での見出しは「産経抄】千葉法相の死刑執行 パフォーマンスに見える」でした。