黙然日記(廃墟)

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産経の熱中症対策キャンペーン。

産経抄】7月26日 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/420219/
今年は特に熱中症対策を兼ねて、ウナギの蒲(かば)焼きに手をのばす人も多いだろう。

 いねぇよそんな奴。いたとしても、日本中探して東京都千代田区大手町サンケイビル産業経済新聞社論説委員室の中に1人いるぐらいです。他人様のことをあんまり馬鹿とか阿呆とか言わないように心がけてはいるのですが、えーとつまりなんというか、夏バテと熱中症の区別がつかない奴を「馬鹿」以外になんと表現したらいいのかわからなくて、たいへん困っているところです。連日何人もの方が熱中症で亡くなっているというニュースを、「あいつらは鰻を食わなかったからバテて死んだんだ」というように聞いていたのでしょうか。こういう人は、今度39℃になる日に鰻の白焼きだけたっぷり食べてから水分も塩分も摂らずにアスファルトの路面で10時間ぐらい突っ立っていてもらいましょうかね。「鰻を食ったら熱中症にならない」という特殊体質の人らしいですから。
 なぜ公共の紙面でこんな出鱈目を確認もせずに堂々と書けるのか、本当に不思議です。本来ならば(できれば先週のうちに)、ここでまともな熱中症対策を書いて、死者や重症者を一人でも減らすよう呼びかけるべきところではないのですか。いや、のんびり鰻好きの作家の日の話を書いたりマスコミの軽薄さを嘆いたりするコラムであっても悪いとは言いませんが、間違った知識を垂れ流して許される場合ではないはずです。
 ……で、せめて産経紙面にまともな熱中症対策は掲載されていないのかと記事検索していたら、こんなものを見つけてしまいました。

猛暑はウナギで乗り切れ! 「土用の丑」で百貨店もぎわう - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/topics/420310/
担当者は「ビタミンBが豊富なウナギは、夏バテや熱中症対策にもってこい。この時期にぴったりです」。

 日本は広いもので、大阪府大阪市北区阪神百貨店鰻売り場にもう1人、産経新聞大阪本社社会部にもう1人、鰻が熱中症に効くと信じ込んでいる人がいたようです。百貨店担当者の話を記者がねじ曲げて書いているのでなければ、ですが(逆に担当者だけが勘違いしているのだとしても、その話に疑問を持たない記者も同罪です)。
 まともに熱中症対策を警告している記事がないのかと思ったら、ないんですよこれが。普通の新聞なら生活面あたりにそれっぽい記事があるものだと思うのですが*1、電子版ではイザ!、MSN産経ニュースとも、そうしたテーマの記事は見あたりません。やっと見つけたと思ったら、ラジオ大阪のコンテンツをMSN産経の名義で配信しているものと、地域ニュースで被害者数の発表と同時に対策法を呼びかけているものだけでした。

【News Tonight いいおとな】熱中症にご用心! - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/entertainments/media/100721/med1007211835001-n1.htm

埼玉、熱中症で25人死亡 梅雨明け翌日から7日間 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/topics/419724/

 1県だけで1週間で25人死亡というのは(埼玉県は人口も多いし内陸平野で特に暑いのですが)、少なくとも朝鮮半島有事で及ぼされる被害の可能性よりは国民の生活と安全に関する重大事態でしょう。それを防ぐ方法はまともな熱中症対策の周知しかなく、その周知の役割を担うのがマスメディアの使命のひとつではないのでしょうか。
 ここでもいちおう周知しておくと、(1)できるだけ炎天下に出ない(2)風のない部屋に閉じこもらない(3)暑い場所での作業は十分気をつけ休憩を取る(4)服装に気をつける(帽子をかぶるなど)(5)水分と塩分を十分に補給する(スポーツドリンクの塩分でも最小限なので、水分だけを摂取していて倒れたらもっと濃い塩水・味噌汁などを補給する)(6)倒れたら涼しい場所で休み体を積極的に冷やす、などです。詳しくは註釈の中の毎日記事などを参照してください。気を失ってからでは救けも呼べません。また、今年の猛暑は夏バテを呼ぶことも確かなので、体力のない方はそちらにも気をつけて、睡眠と栄養をたっぷりとるように心がけてください。抄子も、「夏バテ対策を兼ねて」と書けば、こんなところで馬鹿呼ばわりされることもなかったでしょうに。
 「産経抄」に関しては、斎藤茂吉の「遺族が故人の思い出を綴」った本についてやら、文筆家が四代続いている幸田・青木家の例やら、いろいろ書こうかと思ったのですが、冒頭の一文に引っかかってそれどころじゃありませんでした。

*1:たとえば毎日jpのそれっぽい記事。もちろん、対策の中に「鰻を食べる」は含まれていません。