黙然日記(廃墟)

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産経抄のキレ味。他。

【土・日曜日に書く】論説委員・清湖口敏 やせてもソクラテスの矜持
http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/100718/acd1007180302002-n1.htm

 18日付。「ギリシャは何といっても古代文明発祥の国」という表現は、いかにも産経新聞校閲部長だった清湖口氏らしい乱暴さですね。中国・インドはともかく、メソポタミアやエジプトの立場がありません。ギリシアとエジプトはずいぶん離れているように思うこともありますが、地図を眺めて「(フェニキア人のように)船で移動する」という発想を持ち込めば、驚くほど密接な位置にあると気づきます。アルファベットにしても、それがセム系のフェニキア文字に由来していることは言うまでもなく、民主主義というか君主独裁ではない政治制度にしても、古代部族社会での有力者らによる合議制はありふれたものでした。都市国家における「市民」は、多くの奴隷を使役するわずかな人々であり、むしろ「貴族」階級であったことは指摘されるべきでしょう。もちろん、近代西欧が発明した「民主主義」という概念が、古代ギリシア都市国家に範を取っていることは確かですが、古代ギリシアが近代西欧に先行していたのではなく、逆の関係であることには留意すべきです。
 また清湖口氏は、フランス大革命に関して、自由・平等だけを書いて博愛(友愛)を外しているのは、意図的なのでしょうかね。皮肉にしては時季外れですが。で、広場と民主主義の関係から話が天安門に飛び、現代中国への批判を展開するのは、まあよいとしましょう。しかしそこから、現在の中国における経済発展は政府による国民掌握術だ、なる珍論が展開されます。いやなにがおかしいって、経済発展と収入増が実現すれば国民の不満を押さえ込むことができるのは、いつの時代のどこの為政者だって、みんなわかっていたことです。わかっていてもそれが容易にできないから、政治家はいろいろと仕事をしなくてはならないわけですが、清湖口氏はそんな単純な政治の原則も知らなかった、いまごろ気づいたのでしょうか。日本でも、安保条約改正反対で国民が(おそらく日本史上最高レベルで)反体制化した状況で就任した池田勇人首相が、所得倍増政策を掲げたのもその一例です。ここから始まった高度経済成長は空前にしてほとんど絶後であり、こんな成功例はめったにありません。現在の中国が、やはり所得倍増計画を掲げ実現しつつあるのが、おそらく半世紀を経て唯一の追随例でしょう。これを中国政府の陰謀だ策略だで片づけられる認識が、理解できません。
 あと、中国政府や軍関係の船が他国、少なくとも日本の領海に無断で入ってきた事件って、最近ありましたっけ? 公海上を通過した「事件」ならありましたが。こういう事実関係に関しては、紙面に載せる前に校閲部がしっかりチェックしておくべきでしょうね。校閲部員が「元上司の原稿には畏れ多くて手を入れられない」という姿勢なのだったら、今度は、そういう部下を育ててしまった清湖口氏に、新聞論説委員として民主主義を語る資格はないと言わざるを得ません。

産経抄】7月18日 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/417119/

 「いきなりキレる大人」の姿を見てしまうのはたしかに嫌なものですが、1本か2本線がキレっぱなしな大人の姿をウォッチし続けるのも、なかなかつらいものがあります。「陰で「瞬間湯沸かし器」とけなされているらしい小欄」は、一酸化炭素中毒を周囲にまき散らさないように気をつけてくださいね。「正当な抗議も度が過ぎれば言葉による暴力となる」というのは、「竹島は固有の領土」という(いちおう)正当な主張も度が過ぎると在特会になるというのが好例でしょうか。
 そして、キレる天気=ゲリラ豪雨を経由して、途中からなぜかいきなり、宗教批判を展開しはじめます。産経出身の山谷えり子氏(神政連他の神道系、また仏教系、キリスト教系、ユダヤ教系と多数の宗教団体からまんべんなく支持を受けている、通称【宗教無宿】の人)が比例区で25万票を集めいち早く当選を決めたのに、またなにかご不満なのでしょうか。それとも、彼女が当選したからあと6年は用なしだ、という態度なのでしょうか。