黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経「正論」はあいかわらずのご様子。他。

二大政党を自覚し超党派政治で - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/415499/

 最近、「産経抄」「主張」で手一杯のことが多くて「正論」欄をまともに扱っていなかったので、ちょっとリハビリを兼ねて。
 これは岡崎久彦氏による14日付「正論」です。論評に値しない代物なんですが、その値しないというところに言及の価値があります。菅政権は左翼政権だ、なんと恐ろしいことだ、とおびえたかと思うと、急に一転して、でもいいところもあるよ、自民党と仲良く大政翼賛会を作ってね、と媚び、あとは消費税上げろ防衛費上げろと妄想を並べ立てているだけです。まさしく、政策実現への具体的な道のりをなにも示していない提言というやつなのですが、産経新聞としてはこんな文章を載せてしまってもいいんでしょうか。

強力な「保守政党」再結集を急げ - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/415875/

 遠藤浩一拓殖大学大学院教授による、15日付「正論」です。民主党議席減より比例区での得票減に注目すべき、という指摘は正しいし、その理由を消費税発言に限らず政権運営そのものに求めているのも、まあよいでしょう。しかしその話が途中からいきなり、「野放図な再分配政策(バラマキ)」にすり替わっているのは、どうしたわけでしょうか。財政危機が全面的に民主党連立政権の責任とは思えないのですが。
 再分配に関して、「子育ての社会化なる思想の根拠は何か」というフレーズが出てきて気になったので、少し長く論じます。子供を社会が育てるという発想は、昔のように子供をほったらかしで育てるわけにいかなくなったというだけの話です。わたしが幼稚園から小学校低学年のころは、学校から帰ると靴も脱がずにランドセルを放り出して「○○ちゃんと遊んでくるー」の一言で家を飛び出し、そのまま暗くなるまで、今の季節なら19時前まで戻らなくても、たぶんなにも心配されてはいませんでした(暗くなってから帰ると叱られましたが)*1。今はたぶんそうはいかなくて、学童保育だスポーツクラブだ、17時になったら防災無線で「おうちにかえりましょを」のアナウンスを流すべきだ、それらは当然、行政や社会が負担すべきだ、ということになるのでしょう*2。筋道立てて考えれば、親自身と周囲の双方が、昔とは比較にならない安全性や付加価値を育児に求める風潮があるかぎり、その社会的負担は時代の要求なのでしょう。この風潮への疑問はあるかもしれませんが、それを是とした上で100%の負担を親に求めることはできません。「自助努力」とか耳当たりのいいことを言いながら、時代性を無視して個人に不可能なほどの負担を求めるのが、遠藤氏やそれに近い人々の考え方なのでしょうか。
 「子育ての社会化」についてもうひとつ思い出すのが、古森義久氏が以前、同じようなところに噛みついて、子ども手当政策を国家社会主義と非難していたことです*3。古森氏にしろ遠藤氏(つくる会元副会長)にしろ、教育を社会というより国家が行うのは当然で、しかし育児は社会や国家にいっさい関わらせず家庭と個人に負担を押しつけるという考え方のようです。こういう人たちは、たとえば幼児教育に関して、どう認識しているんでしょうか。幼保一元化を持ち出すまでもなく、幼稚園ではしつけ教育が、保育園では読み書きなどの教育内容が重視されており、事実上区別の必要がなくなっている現実を、はたして理解しているのでしょうか。
 
 子育てについてはこのぐらいにして、再分配の話に戻ります。遠藤氏は、野放図でなくても再分配そのものが気にくわない、社会が個人になにかすること自体が気にくわないのでしょうか。治安維持法の時代には、『昆虫の社会』という学術書社会主義の本と疑われたという都市伝説めいた話がありますが、「社会」という言葉への猛烈な反発は、同じ発想なのでしょうかね。上述のように、国家が個人に干渉することは歓迎しているのですから、「社会」そのものが嫌いなのだとしか思えません。
 最後に遠藤氏は、保守系政党の票をすべて合計すれば約2500万票、民主党の得票約1850万票を大きく超えるのだと指摘し、例の「保守再結集」を論じていますが、この計算は正しいのでしょうか。選挙協力した自由民主党*4たちあがれ日本日本創新党、それに今日たち日と統一会派を組むことになった新党改革までは含めるとしても、そこにみんなの党を入れる理由はないでしょう。「保守」というくくりでたちあがれ日本みんなの党を一緒にしていいのなら、民主党もそこに含めていいぐらいです。そして2500万という数字は、みんなの党の獲得票数約800万票を含んでいるのです。4党だけの合計なら1700万票弱にしかなりません。なんだったらそこに、幸福実現党の23万票を足してもいいですけどね。*5

【40×40】諸星清佳 「偏向教育」なんぞ影響なし - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/life/education/100715/edc1007150802001-n1.htm

 15日付。諸星氏は北教組の「偏向教育」を受けたが、現実を知って目が覚め、「今では左翼がいうところの「反動的新聞」(笑)にコラムを書くような、“立派な大人”になっている」、だから「偏向教育」も怖れることはない、のだそうです。いや、一概には言えないんじゃないですかね。まあ、「なんか面白いことを言ってる人がいるな」という意味で、コラムとしては価値があるでしょう。

*1:いきなり思い出したのですが当時、「こないだまでは暗くなる前に戻れば18時半からのテレビを見られたのに、なんで最近は間に合わないんだろう」というのが、けっこう疑問でした。

*2:今の季節だと、「17時に帰れ」と言われてもまだ明るいのでもうちょっと遊び続け、かえって子供の帰宅を遅くしてしまうのではないかと思うのですが、実際の太陽の動きに合わせて放送の時刻を柔軟にできないものなのでしょうか。

*3: d:id:pr3:20091223:1261580373 参照。この日の「正論」も遠藤氏で、やはりわけのわからないことを言っていますね。

*4:正確には、選挙協力は創生「日本」の独断で自民党としてはかが掘っていませんが。

*5:国民新党の100万票をこちら側に足せば、民主党にわずかに及ばないぐらいにはなります。なぜそこをスルーしているのか、よくわかりませんが。