黙然日記(廃墟)

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産経「主張」のご満悦。

民主党敗北 国益第一へ軌道修正急げ 「ねじれ」選んだ民意は重い - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/414642/

 12日付「主張」。なにやら大変ご満悦のご様子ですが、まあ無理からぬところですしょう。下野なう状態に変わりはないんですが、ねじれ国会になったことで野党側が有利になったことは間違いありません。「自民のねじれはよいねじれ」の一言に尽きますね。
 それにしても、「日本が「まともな国」として21世紀を生き抜いていくこと」だの「外国人参政権付与法案など「国家解体」といわれる問題法案」だの、「万難を排して増税を貫く覚悟」だの、次から次に面白いフレーズが出てきて、いちいち引用やツッコミをする暇もありません。
 最大の敗因として、菅直人首相の消費税に関する発言のブレを指摘していますが、ブレが問題ではないでしょう。私見では、消費税引き上げそのものに徹底反対する層と、消費税「だけ」を引き上げる動きに反対する層、両方からの反発を買ったものだろうと思いますが、この「主張」はどちらも無視して、「発言のブレ」だけにその理由を求めています。「消費税導入や引き上げを言い出したら選挙に負ける」のは、30年前からわかっていることですが、この単純な経験的事実をここまで無視できるのはたいしたものです*1
 3年前2007年参院選自民党が大敗したあと、民主党や世論は内閣退陣または解散総選挙を求めました。3年前のことを産経は相当恨んでいると思われますが、すでに1年近くの為政を通して破綻が見えていた当時の安倍晋三内閣と、看板掛け替えとはいえ就任1ヶ月の菅内閣では、さすがに意味が違うでしょう。当時の安倍内閣に意味があったとしたら、それは「自民党の政権をなんとしても維持すること」であり、現在の菅内閣が持つ意味は、「自民党政治の息の根を止めること」です。自民党が野党生活を経験してまともな政党に生まれ変わる、または解体するまでは、民主党でもみんなの党でもとりあえず、非自民政権をもう少し続けてもらわねば、日本国にまともな政党政治はよみがえりません。10ヶ月で政権復帰を許してしまっては、16年前の二の舞になることは明白なのです*2。長期間の政権独占で破綻が見えていた自民党政権を終了させるのは早い方がいいですが、破綻しつつあるとはいえスタートしたばかりの非自民政権を終了させることは、昨年8月の政権選択選挙における民意そのものを否定することになります。それが民主党政権、菅政権でまったく問題ないということではないのですが、現状で総選挙を行うと、どんなに自民党の支持が低くても結果としてして自民党が政権を獲得してしまうという、民意をと完全に矛盾した状態になりかねないのです。昨日も分析したように、比例区での得票を見るかぎり自民党の支持そのものは大敗した前回よりさらに下回っています(比例区総得票数で、前回1650万票余りに対して今回は1400万票ぎりぎり)。しかし小選挙区(一人区)では、政権批判票が自民党に集中せざるを得ません。小選挙区制・二大政党制は「どっちもだめ」という状況では「よりましな方を選ぶ」という前提ですが、「どっちもまったく駄目」という状況ではデッドロックに陥るのです。いや、このデッドロックは左派改革を望む有権者がずっと抱えていたものですが、それが中道やや右まで含む多くの有権者(というか今の自民党の極右路線を支持する人以外)に襲いかかるわけです。
 「主張」の締めくくりは「消費税増税を遠ざける結果にしてはなるまい。」ですが、最後まで「争点は消費税、そして増税が唯一の正解」で押し通すつもりのようです。全体の民意は、必ずしも層ではなかったように見受けられるのですがね。

*1:そして何度も指摘しているように、菅政権は「税制全体を見直す、当然消費税も含まれる」という提案をしたのに、それがマスコミでは事実上伝えられなかったわけです。この報道姿勢をいまだにまともに指摘・批判しない民主党執行部も、どうかしていると思うのですが。

*2:その自民党政権復帰に手を貸してしまったのが鳩山由紀夫氏・菅直人氏・枝野幸男氏らがいた新党さきがけであり、その継続を許してしまったのが小沢一郎氏率いる自由党であったことは、民主党全体として明確に総括しなければならないと考えます。