産経「主張」、忘れたので問う。
消費税を問う 「第三の道」真贋見極めよ - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/408667/
27日「主張」。話の前提が根本から間違っているのではないかと思います(産経ではよくあることですが)。たとえば菅直人首相の消費税に関する姿勢についてです。菅氏が今年1月に財務相に就任したとき、「消費税引き上げを含めた税制見直し」を唱え、議論を始めかけていました。6月になってから*1思わぬ形で首相になり参院選に突入したわけですが、参院選マニフェストも「消費税引き上げを含めた税制見直し」を掲げています。少なくともこの半年、大筋としては一貫しているわけです(ただし、「自民党を参考にして10%」という数値を口走ったことは、失言でなければ大失態です)。消費税をことさらに取り上げて争点化しているのは産経を含めたマスメディア各社ですし(もう今回選挙の流れとしては止めようがなさそうですが)、財務相当時に税制見直し検討を始めたとき、諸手をあげて賛同していたのを、産経「主張」は忘れてしまったのでしょうか*2。また、昨年衆院選でのマニフェストも、「4年間は消費税を凍結する」であって、「4年間議論を凍結する」とはどこにも書いてありません。こういう書き方がしてあれば、普通の読解力があれば「4年の間に議論して次の衆院選後に上げる気だな」と思いますし、共産党などは当時からそういう批判をしていました。それがいい悪いはともかく、衆院選から現在まで、民主党も菅首相も、言っていることは一貫しているとしか思えません。
真ん中らへんは耳タコの消費税必要論です。「税収が景気に左右されにくく、若年層から老人まで負担する」から公平だというなら、いっそ人頭税でも提案してみたらどうですか? ネオリベ改革・サッチャリズムの行き着く先はそこでしょう。
現在の日本が「中福祉・低負担」なのは、理想とは言いませんが、それなりに結構なことです。「大きな政府で高福祉・高負担」「小さな政府で低福祉・低負担」の二者択一を迫られることが多いのですから、現状を継続できるならそれにこしたことはありません。
実は昔から、日本の仕組みは「中福祉・低負担」でした。それは右肩上がりの時代に、重税感のない負担とそれなりの福祉を両立できたからで、人口構成がピラミッド型だった時代の年金制度が典型的なものです。経済がよく回っていて負担感が少ないというだけで、本質的には「大きな政府」だったと考えるべきでしょう。これは(谷垣禎一自民党総裁が、W杯日本戦のたびにCMに登場して言っているように)、かつて日本が世界一うまくいっている国だったころは「大きな政府」だった、“世界で唯一成功した社会主義の国”だった時代を指しています。以前も指摘しましたが、菅氏の「第三の道」は、土木事業を福祉産業に置き換えた「第一の道」(「大きな政府」)と考えることができます。時代状況がすべて違うので、単純にあの時代に戻れるわけはないのですが、“保守”を標榜しかつての日本を取り戻すという(自民党と同じ)主張をする産経が、目くじら立てて「大きな政府」を批判する理由が、さっぱりわかりません。
*1:そういえば、あれは6月2日から4日にかけてのことでした。わずか3週間前、まだ今月の話だというのが、不思議な感覚です。考えてみると今月はいろいろありましたね。
*2:たとえば http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/358569/ 、d:id:pr3:20100217:1266418292 でツッコミ済み。