黙然日記(廃墟)

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産経「主張」の保険観他。

オバマ大統領の医療保険改革はなにを意味するか - ステージ風発:イザ!
http://komoriy.iza.ne.jp/blog/entry/1516566/

 えーと。古森義久氏はワシントンを中心に海外駐在期間が長いわけですが、日本で医者にかかったことはないのでしょうか。あるいは、日本で勤務しているときに健康保険に加入していなかったのでしょうか。『大学病院で母はなぜ死んだか』(中公文庫,ISBN:9784122031395)という名著もお持ちなのですから、日本国の医療制度について知識がないとは思えませんが。国民皆保険の導入を「国営化」「大きな政府」ととらえているのは、これは古森氏自身ではなく米国社会の風潮を言っているわけですが、そこに疑問を持たないのでしょうかね。「(オバマ大統領は)リベラリズム信奉のイデオローグ」という激越な表現で非難されるものは、世界の常識=米国の非常識という事実だけではないでしょうか。
 自己責任を唱えるのも結構なんですが、特に低所得者が医者に頼れない社会が、代替医療という名の呪術、ホメオパシーのような似非科学をはびこらせる土壌になっていることは、けっして見逃してはなりません。

米医療改革法 対立克服に指導力を期待 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/372107/

「医療」だけでない米政権の難問 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/372080/

 上は24日付「主張」、下は同じく24日付の、ロナルド・モース元カリフォルニア大学教授による「正論」です。多少の偶然もあるかもしれませんが、産経がこの報道に熱心に取り組む姿勢がわかります。しかしご想像の通り、「皆保険を拒否する米国の風潮自体がおかしい」という話はまったく出てきません。
 なんでも「自己責任」で片づける風潮、特にそれが極限に達したブッシュ前政権に対する「ノー」の意思表示、「Change」こそが、バラク・オバマ氏を大統領の座へと導きました。その象徴となる政策が「国民皆保険医療保険改革)」でしたから、注目が集まるのは当然ですが。「交代と改革が必要だ、その方向性は見えている」と、日本の国民もしばらく前まで信じていましたし、その方向への道そのものは、まだ明るく照らされ見えていると思うのですが。