黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経、まず攻撃ありき。

 長くなってしまったので今日の分は2エントリに分けます。

日韓歴史研究・第2期報告書「まず攻撃ありき」 残る韓国側への批判と疑問 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/diplomacy/371932/

 そういうわけで23日に報告書が「まとまった」のですが、産経の見出しはいきなりこれです。「ケンカ売ってんのか?」と言われてもしかたないところですし、おそらく実際に売っているつもりなんでしょうね。
 トップなので無署名ですが、産経は、扶桑社版「つくる会」教科書が韓国側から非難を受けること自体は当然だと認識しているのだな、と確認できたことが、この記事の収穫でした。議論が事実上物別れに終わったことについて、産経が日本にも責任があるとはまったく考えていないらしいことも(以下の記事を通して)わかりましたが、これはいまさらなので収穫でもなんでもないですね。

日韓歴史研究「共同研究は不毛」 共通認識形成にはほど遠く - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/diplomacy/371933/

 前ソウル支局特派員の久保田るり子記者による解説記事です。韓国側の姿勢を悪し様に言いつのっている点では変わりありません。古田博司筑波大教授(教科書小グループ幹事)による、「韓国側のサンプリングは恣意(しい)的。当初から善玉・悪玉史観があり、それに合わせて資料を張り付けた観が否めない」という発言を紹介していますが、資料集め以前に染料と顔料の区別もつかぬ身で近世朝鮮史を暗黒時代と決めつける歴史観の持ち主が、いったいなにを言っているのかと、鼻で笑うしかありません。前回のエントリ*1で、古田氏を教科書小グループに入れた責任者出てこいと言いましたが、安倍晋三内閣時代の人事だったのですね。別に政府任用人事ではありませんが。
 久保田記者も上の無署名記事と同じように、扶桑社版「つくる会」教科書が、わずか0.4%の採択率なのにその存在が過大評価され、日本の歴史教科書全体が右翼的・軍国主義的と決めつけられていることは不当だと感じているようで、さすがにそのていどの理性はあるようです。

韓国に主観的歴史観、世論も変化 日韓歴史研究 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/diplomacy/372039/

 水沼啓子・ソウル特派員*2による記事です。匿名の「国史を専門とする日本の歴史学者」が解説していますが、これも古田氏と見ていいのかな。「正論」文化人ですから、産経が真っ先にコメントを取りに行くことは考えられます。2007年当時、左派の盧武鉉政権時代に始められたこの研究では、韓国側委員も対日強硬派が多かったと水沼記者は指摘していますが、そういうもんだろうか。当時の日本側の政権は、歴史観についてはおそらく史上最右翼だった安倍晋三政権で、委員のメンバーも全員とか多数とは言いませんが、、古田氏のような対韓強硬派が入り込んでいたわけです。

日本の“歴史外交”に乱れ オール・ジャパンはないのか - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/korea/370891/

 これは20日付の黒田勝弘・ソウル支局長兼論説委員によるコラム【緯度経度】なのですが、今回の研究報告にも言及しているので併せて取り上げます。日韓親善の文化賞が鄭在貞・前ソウル市立大教授に授与されたことについて、文句をつける内容です。鄭氏は、上の久保田記事でも「バランスをとろうとした韓国側委員」と評価されているのですが、黒田記者はとにかく韓国人の歴史観をすべて“敵”だと決めつけた上で、対外的にオールジャパンで戦うべきだと論じています。学問の世界に敵味方を持ち込むその発想に驚くと同時に、この人は韓国の歴史観もビビンバも嫌いなのに、いったいなんのために旅券法違反まで犯して何十年も韓国勤務を続けているのだろう、という、強い疑問を抱きました。
 このコラムによると、雑誌「正論」4月号に前出の古田氏が共同研究に関する文章を書いているようなので、機会があったらチェックしてみます(ちょっと遠くの図書館にしかないんです。マイナー誌だから)。

追記(3/24)。

 この産経報道、および古田博司氏を軸とした共同研究日本側の姿勢については、ni0615さんがさらに鋭く検証されています。

「まず攻撃ありき」はどっち? 日韓歴史共同研究第2期報告書 - 安禅不必須山水:イザ!
http://ni0615.iza.ne.jp/blog/entry/1516743/

*1: d:id:pr3:20091229:1262099101

*2:keyword:水沼啓子を作ったのはわたしですが、こんなに言及する機会がないとは予想していませんでした。反省します。